本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
ザ・ロウ(THE ROW)の公式サイトに、ブランドの説明は3文しかありません。
歴史のページも、職人の紹介も、ケアガイドもない。セーターが21万円から、コートが44万円から、高いものは200万円を超えるブランドです。
このブランドは、語らないことを選んでいます。創業から一度も広告を出していませんし、ショーでは招待客にスマートフォンをしまわせます。
ただ、今回あらためて公式サイトを隅まで見て、考えが少し変わりました。ザ・ロウは、何も言わないわけではありません。言うことと言わないことが、きれいに分かれています。
何の糸を何%使っているかも、どこの国で縫ったかも、公式はちゃんと書いています。書いていないのは、洗い方だけです。
この記事では、公式が言っていることをきちんと拾ったうえで、言っていない部分をどう埋めるかを書きます。結論を先に言うと、答えは服に付いているタグにあります。
ザ・ロウとはどんなブランド?
公式サイトの「企業情報」に載っている文章が、これです。全文です。
ザ・ロウは2005年にアシュリー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンによって設立された。創業以来、最高級の素材と完璧で申し分のないディティール、正確無比なテーラリングに焦点をあて、ブランドは時代を超越した視点と古典的特徴を形成する繊細なタッチを融合している。ザ・ロウのコレクションはまた、思慮深さと妥協の無い品質に基づいたシンプルさが持つ強さを探求し続けている。
THE ROW公式サイト「企業情報」より
これで終わりです。ページを下にたどっても、続きはありません。
始まりは「完璧なTシャツ」でした
アシュリー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセン。双子の姉妹です。公式は2005年設立としています。
始まりは、完璧なTシャツを一枚つくろうとしたことだったと伝えられています。最初に出したコレクションは7型だけ。それを、当時のバーニーズ ニューヨークが全部買い取りました。
お二人はもともと子役として知られた方ですが、公式サイトにそうした経歴の説明は一切ありません。名前が出てくるのは、先ほどの一文だけです。
名前の由来は、公式には書かれていません
「ザ・ロウという名前は、ロンドンの仕立て屋街サヴィル・ロウから取られた」という説明を、よく見かけます。
念のため、公式サイト内で「Savile」を検索してみました。結果は0件でした。ブランドの説明ページにも出てきません。
仕立てに重きを置くブランドですから、話としては自然です。それでも、公式が言っていないことを「由来はこれです」と書くのはやめておきます。
広告を、一度も出していません
創業から現在まで、ザ・ロウは広告を出したことがありません。オルセン姉妹は、個人のSNSアカウントも持っていません。
2024年秋と2025年春夏のショーでは、招待客にスマートフォンでの撮影を控えるよう求め、代わりに小さなノートを配りました。会場の様子はほとんど外に出ていません。
公式のInstagramはありますが、投稿は月にいくつか。宣伝というより、記録に近い使い方です。
ケアガイドがないのは、うっかり作り忘れたからではありません。
広告を出さない。SNSをやらない。ショーを撮らせない。そのブランドが、洗い方だけ懇切丁寧に書いているほうが、かえって不自然です。
それでも、評価額は10億ドルです
2024年、ザ・ロウは外部から出資を受けました。出資者には、シャネルを所有するヴェルテメール家(Mousse Partners)や、ロレアル創業家のフランソワーズ・ベタンクール・メイエール氏(Tethys Invest)が名を連ねています。
このときの企業評価額が、およそ10億ドルでした。オルセン姉妹は引き続き筆頭株主とされています。
受賞歴も並べておきます。CFDA(アメリカファッション協議会)の最優秀ウィメンズウェアデザイナー賞を2012年と2015年に、最優秀アクセサリーデザイナー賞を2014年・2018年・2019年に受けています。
広告を一切出さずに、ここまで来たブランドです。「語らない」は、弱さではなく戦略だと考えたほうがよさそうです。
公式サイトに、日本の店は載っていません
公式の「店舗検索」に並んでいるのは、次の16か所です。
- アメリカ …… ニューヨーク(71丁目、サックス・フィフス・アベニューの2フロア)、アマガンセット、ロサンゼルス
- イギリス …… ロンドン(カルロス・プレイス、ハロッズ、セルフリッジズ、ドーバー ストリート マーケット)
- フランス …… パリ(モンタボール通り、ギャラリー・ラファイエット、ボン・マルシェ)
この3か国だけです。日本はゼロ。一店も載っていません。
ところが、日本にはザ・ロウの売り場があります。
日本の売り場は、本国の子会社が運営しています
名古屋の松坂屋に「THE ROW 松坂屋名古屋店」があります。銀座や六本木にもあります。公式サイトに載っていないのに、なぜあるのか。
たどってみると、運営しているのはザ・ロウ・ジャパン合同会社でした。米ザ・ロウの100%出資による子会社で、事業内容は「ブランド『ザ・ロウ』における衣類、装飾品の輸入及び販売」。設立は2017年8月、本社は東京都港区です。
商社や代理店が仕入れて売っているのではありません。ブランド自身が日本法人を作って、自分で売り場を持っています。
「ザ・ロウ ◯◯」の名で出ている売り場は、たとえば次のとおりです。
- 東京 …… ギンザシックス、六本木ヒルズ、伊勢丹新宿(本館・メンズ館)、銀座三越、日本橋タカシマヤ、池袋西武
- 愛知 …… 名古屋栄三越、名古屋松坂屋
ロンハーマン、ビームス、ユナイテッドアローズ、ドーバー ストリート マーケット ギンザなどにも置かれていますが、こちらは取り扱い店です。買ったあとの相談先が変わるので、区別しておいてください。
日本に自前の売り場を持っていて、それを公式サイトに一店も載せていません。
広告を出さない、SNSをやらない、ショーを撮らせない、ケアガイドを書かない。そこに「日本の店も案内しない」が加わります。筋は通っていますが、買う側としては、自分で調べるしかありません。
ここは後の「修理をどこに頼むか」の話につながるので、覚えておいてください。
ブランド基礎データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2005年(公式サイト「企業情報」の記載) |
| 創業者 | アシュリー・オルセン、メアリー=ケイト・オルセン |
| 拠点 | アメリカ・ニューヨーク |
| 公式サイトの店舗 | 米・英・仏の16か所のみ。日本の店は非掲載 |
| 日本の売り場 | 米ザ・ロウ100%子会社「ザ・ロウ・ジャパン合同会社」が運営(東京・愛知など) |
| 生産国 | イタリア(商品ページの「Details」に記載) |
| 主な素材 | バージンウール、カシミヤ、シルク、コットン、レザー、シアリング |
| 価格帯の一例 | セーター21万2千円〜48万7千円、コート44万7千円〜211万7千円 |
| 公式のケアガイド | ありません(混率と生産国のみ公式に記載) |
| お手入れ難易度 | ★★★★☆ 情報が少ないぶん、自分で読む力が要ります |
【クリーニング師が解説】「Care」の欄に、ケアのことが書いていません
ここが、このブランドのいちばん変わっているところです。
これまでこのブログで扱ってきたブランドには、たいてい公式のケアガイドがありました。洗い方、保管の仕方、してはいけないこと。ブランドが自分の言葉で書いています。
ザ・ロウには、それがありません。店舗の建築を紹介するページはあるのに、です。
商品ページを3点、開いてみました
実際に見ていただいたほうが早いので、並べます。すべて公式の日本語ページ、2026年9月時点のものです。
| 商品 | 「Details」の中身 | 「Material & Care」の中身 |
|---|---|---|
| Pruce トップ 22万8千円 | ウール70%、シルク30% イタリア製 | Soft wool and silk knit using a single-ply jersey stitch.(以下、風合いの説明が1文) |
| Phef トップ 22万8千円 | コットン70%、カシミア30% イタリア製 | 生地の説明のみ |
| Emma コート | バージンウール72%、カシミア28% シルクツイル100%のフルライニング イタリア製 | Virgin wool and cashmere twill with a fluid drape and soft, matte surface.(以下、風合いの説明が1文) |
見ていただきたいのは、項目の名前と中身が合っていないところです。
「Material & Care」を開いて出てくるのは、生地の風合いの描写だけです。洗えるのか洗えないのか、家で扱っていいのか、一言もありません。しかも日本語のページなのに、この欄だけ英語のままです。
その一方で、混率と生産国は「Details」にきちんと書いてあります。
これは不親切なのではなく、方針だと思います
広告を出さない、経歴を語らない、ショーを撮らせない。そのブランドが、洗い方だけ丁寧に説明するほうが、やはり不自然です。
店で買えば、店員が説明します。ザ・ロウが想定しているのは、そういう買い方なのだと思います。売り場を絞っているのも、同じ考え方の表れでしょう。
ただ、日本の売り場は東京と愛知に限られます。それ以外の土地に住んでいて、オンラインで買った人には、説明してくれる相手がいません。
では、判断のよりどころはどこにあるか。
服に付いているタグです。
日本国内で正規に販売される衣類には、家庭用品品質表示法にもとづいて、組成(素材の混率)と取扱い表示(洗濯記号)を表示する義務があります。公式サイトが洗い方を書かなくても、タグには書いてあります。
しかも、ザ・ロウの場合はもう一つ理由があります。後で触れますが、公式に修理を頼むときに必要な品番も、同じタグに載っています。
だから、まずタグを見てください。話はそこからです。
タグのどこを見ればいいか
① 洗い方の記号(いちばん左)
桶の形をした記号です。
- 桶に× …… 水では洗えません。ここで家庭洗いは終わりです
- 桶の中に数字 …… その温度まで洗えます
- 桶に手のマーク …… 手洗いのみ
② クリーニングの記号(右のほう)
丸の形をした記号です。
- 丸にP、または丸にF …… ドライクリーニングができます
- 丸に× …… ドライもできません。これが出たら必ず相談してください
- 丸にWの文字 …… 専門店での水洗い(ウェットクリーニング)ができます
③ 組成表示
「カシミヤ100%」「毛70% カシミヤ30%」といった表記です。洗い方の記号と合わせて見ると、判断がはっきりします。ザ・ロウの場合、ここは公式の商品ページ(Details)とも照らし合わせられます。
④ 品番(アルファベットと数字の並び)
修理を頼むときに使います。ザ・ロウは商品ページにも品番が出ています(R000616Y1043MGM のような並びです)。オンラインで買ったなら注文履歴からもたどれますが、店で買ったならタグが頼りです。写真に撮っておくと後で楽です。
ザ・ロウに多い素材と、その扱い
公式の商品ページに出てくる混率を並べると、傾向が見えてきます。
| よく出てくる生地 | 実例 | 注意したいこと |
|---|---|---|
| バージンウール&カシミヤのツイル | Emma コート(72:28) | 型がいのち。ハンガーは肩幅のあるものを |
| ウール&シルクのニット | Pruce トップ(70:30) | シルクが入ると、水と汗に弱くなります |
| コットン&カシミヤのニット | Phef トップ(70:30) | たたんでしまう。吊るすと肩と丈が伸びます |
| カシミヤ100% | ― | 二層に編んだ厚手のものがあります。重いぶん、吊るすと伸びます |
| シルク | コートの裏地など | 汗と水じみに弱い。自己流の部分洗いは避ける |
| シアリング(羊の毛皮) | ― | 専門の扱いが要ります。家庭では無理です |
表にして気づくことがあります。どれも混ぜ物です。
単一素材なら判断は簡単なのですが、ウールとシルク、コットンとカシミヤのように性質の違う糸が混ざると、弱いほうに合わせるしかありません。ウール70%シルク30%のニットは、シルクの扱いで考えます。
そしてもう一つ。並べた生地は、すべてイタリア製でした。イタリアの生地は風合いで勝負するものが多く、その風合いは仕上げで決まります。家で洗って風合いが落ちたものを、元に戻すのは難しいです。
ニットを吊るさないでください。
これは、ザ・ロウに限った話ではありませんが、価格が価格なので念を押します。カシミヤの入ったセーターをハンガーにかけたまま半年置くと、肩が出て、丈が伸びます。元には戻りません。
ザ・ロウには、二層に編んだ厚手のカシミヤもあります。しっかりした分だけ重いので、吊るしたときにかかる力も大きくなります。
たたんで、平らに置く。それだけで寿命が変わります。
信頼できるクリーニング店にお願いすることも一つです。またクリーニング店に出す時も、大事に扱ってもらえるコースを選ぶことをおすすめします。
お手入れに使う道具
ここからは、お手入れに使う道具を紹介します。
LIVRER シルク&ウール ディタージェント(カシミヤ用の中性洗剤)
タグに手洗いまたは水洗いの表示がある場合に限り使います。シルク・ウール・カシミヤといった動物性の繊維に向けて作られた中性洗剤です。カシミヤは繊維が細く、普通の洗剤では風合いが落ちます。桶に×の表示なら使いません。
修理・アフターサービスの窓口
公式には、購入後の相談窓口が用意されています。そして、ここが今回いちばんの収穫でした。
購入場所を問うことなく、あらゆるお客さまに対して製品のケアサービスが提供されています。
THE ROW公式サイト「アフターサービス」より
買った場所を問わない、と書いてあります。百貨店やセレクトショップで買ったものでも、公式に相談してよいということです。
ただし同じページに、有効な購入証明書が必要とも明記されています。レシートや注文確認メールは、捨てずに残しておいてください。
相談できる窓口
- アフターサービスの申込フォーム …… 公式サイトの「よくある質問」から「アフターサービス」へ進みます
THE ROW アフターサービス - お問い合わせフォーム …… 用件の選択肢に「アフターサービス」があります
THE ROW お問い合わせ
相談する前に、タグの写真を撮っておいてください。品番と組成と洗濯記号が、一枚で伝わります。
また、日本で買ったなら、まずその売り場に相談するのがいちばん早いです。ギンザシックスや名古屋松坂屋のような「ザ・ロウ」名義の売り場は、本国の子会社が運営しているので、ブランドの中で話が通ります。ロンハーマンやビームスのような取り扱い店で買った場合も、まずその店へ。取り扱い店には、そのブランドの修理をどこへ回すかの道筋があります。
クリーニングについては、公式に指定や案内がありません。タグの組成と洗濯記号を見せられるお店へ持って行ってください。素材が分かれば、お店は判断できます。
日本でザ・ロウを買うなら
前に書いたとおり、日本の売り場は東京と愛知に限られます。近くに売り場がない場合は、公式オンラインストアか、国内のオンラインストアになります。
国内のストアで買っておく利点は、値段や送料だけではありません。日本語で相談できる相手が、ひとつ増えます。公式のアフターサービスは買った場所を問わないと書かれていますが、申込フォームは英語です。日本語の窓口がもう一つあるのは、やはり心強いです。
ELLE SHOP(エル・ショップ)|ザ・ロウ取扱い一覧
雑誌『エル』のオンラインストアです。ウェア57点、バッグ・財布95点、シューズ6点、小物10点の計168点を扱っています(2026年9月時点)。日本語で買えて、日本から返品の相談ができます。ただし在庫は1点ずつのものが多く、返品不可の商品もあるので、購入前に条件を確認してください。
まとめ
- ザ・ロウは2005年、オルセン姉妹が設立したアメリカのブランド。最初のコレクション7型を、バーニーズが全部買い取った
- 公式サイトのブランド説明は3文だけ。歴史もケアガイドも載っていない
- 創業から一度も広告を出していない。ショーでは撮影も禁じる
- それでも2024年の出資時の企業評価額は約10億ドル。シャネルの所有一族やロレアル創業家が出資した
- 名前の由来(サヴィル・ロウ説)は公式サイトに記載なし
- 公式サイトの店舗検索に載るのは米・英・仏の16か所だけ。日本の店は一つも載っていない
- それでも日本には売り場がある。運営は米ザ・ロウ100%子会社のザ・ロウ・ジャパン合同会社(ギンザシックス、六本木ヒルズ、名古屋松坂屋ほか)
- 商品ページの「Details」には混率と生産国(イタリア製)が載っている
- ただし「Material & Care」には洗い方が一言も書いていない。生地の説明だけ、しかも英語のまま
- だからタグがすべて。①洗い方の記号 ②クリーニングの記号 ③組成 ④品番 を見る
- 素材はどれも混ぜ物。弱いほうに合わせて扱う
- カシミヤのニットは吊るさない。たたんで平らに
- 公式のアフターサービスは買った場所を問わない。ただし購入証明書が要る
素材ごとのお手入れは、それぞれの記事で詳しく書いています。
→ ジョン スメドレーってどんなブランド?メリノウールとシーアイランドコットンのお手入れも解説
→ トレンチコートの部品の意味|エポレット・ガンフラップ・Dリングは何のためにあるのか
公式の窓口

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


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