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あのチェックのマフラー。持っている方、多いと思います。
でも、洗ったことがある方は少ないのではないでしょうか。 高かったし、カシミヤだし、下手に触って台無しにしたくない。結局クローゼットで何年も、というのがよくある話です。
この記事では、まずあのチェックが何だったのかを見ます。実は、もともと表に出る柄ではありませんでした。そのあと、あのマフラーがどう作られているかを知ったうえで、扱い方を考えます。
作り方が分かると、やってはいけないことが自然に分かります。
チェックは、もともと裏地でした
バーバリー・チェックが初めて使われたのは、1920年代。レインコートの裏地としてでした。
外から見える柄ではなかったのです。コートを脱いだときにちらりと見える、内側の布。それが出発点でした。
表に出たのは、1967年の思いつきから
公式が語っている、有名なエピソードがあります。
1967年、パリ店のバイヤーが、英国大使のためのファッション展示を準備していました。そのときに閃いて、コートからチェックの裏地を外し、それでスーツケースを包み、傘のカバーを作ってみた。
これがチェックのアクセサリーの誕生だと、公式は記しています。
裏地を引っ張り出した一人の思いつきが、ブランドの顔になった。 公式も「アイコンになったのは1960年代だった」と書いています。
そして、マフラーへ
チェックのカシミヤマフラーが登場したのは1970年代です。公式はこれを「最もよく知られたアクセサリーの一つ」と表現しています。
その後、1980〜90年代のキャンペーンで前面に使われ、いまは登録商標になっています。何十年かのあいだに、配色も置き方も何度も変わってきました。
現在のクリエイティブ・ディレクター、ダニエル・リーのもとでは、チェックを斜め(バイアス)に置き、新しい配色と素材で更新されている、と公式は説明しています。
あのマフラーは、どう作られているか
ここからが、お手入れの話につながる部分です。
1900年から、同じ工場と組んでいます
公式によれば、トーマス・バーバリーは地元の職人や製造業者と組むことを大切にし、最高品質の英国の生地を評価していました。
そして1900年、スコットランド・エルギンのジョンストンズ・オブ・エルギン(Johnstons of Elgin)との協業が始まります。1797年創業の家族経営の会社です。
それ以来ずっと、バーバリーのマフラーはこの会社と作られています。 120年以上、同じ相手と。
1枚に、30以上の工程
公式の説明は具体的です。なお、公式サイトの表記は「マフラー」ではなく「スカーフ」です。公式の言葉を引くところは、そのまま「スカーフ」と書きます。
- スコットランドの工場の伝統的な織機で織られる
- 1枚のスカーフを織るのに、職人の手で30以上の工程を要する
- 正しいバーバリー・チェックの配色を出すために、糸を織機の上に正確な順序で並べる
- 織り上がった生地を、周辺の自然の湧き水で洗う
- そのあと、チーゼル(植物の実)で丁寧にブラッシングして、極上の柔らかさを出す
- これらの技法は世代を超えて受け継がれ、多くの工程がいまも手作業
ここで一つ、決定的なことが分かります。
あのマフラーの柔らかさは、染めや薬品ではなく、「洗って、起毛させる」ことで作られています。
チェックの柄も、プリントではありません。糸を順番に並べて織り出した柄です。
つまり、表面の細かい毛羽そのものが、あの風合いの正体なのです。
【クリーニング師が解説】お手入れの注意点
やってはいけないこと
① こすらない。
これが最大の禁止事項です。柔らかさの正体は表面の毛羽でした。こすれば毛羽は倒れ、絡まり、二度と戻りません。 洗うときも、汚れを落とすときも、こすらない。
② 洗濯機で回さない。
カシミヤは繊維の表面がうろこ状になっていて、水中で揉まれると絡み合って縮みます。一度縮んだものは戻せません。
③ お湯を使わない。
熱は縮みを早めます。触って冷たいと感じる水で。
④ 絞らない、吊るさない。
濡れたマフラーは重く、その重みで伸びます。水気はタオルで押さえて取り、平らに置いて乾かしてください。
⑤ 直射日光に当てない。
色が褪せます。チェックは色の組み合わせでできているので、一部だけ褪せると柄そのものが崩れて見えます。
洗うなら、こう
まず洗濯表示を確認してください。 品番によって違います。水洗いできる表示があるものに限った話として、手順を書きます。
- 冷たい水に、カシミヤ対応の中性洗剤を溶かす
- マフラーを沈めて、上から静かに押す。離す。これだけ(押し洗い)。もまない、こすらない
- 水を替えて、同じように押してすすぐ
- タオルにはさんで、押さえて水気を取る
- 平らに置いて、形を整えて乾かす。フリンジは指でそっと梳いておく
乾いてからブラシを軽くかけると、寝ていた毛羽が起きて風合いが戻ります。バーバリーの工場がチーゼルでやっていることの、ごく簡易版です。力を入れないのがコツで、撫でるように一方向へ。
毛玉について
首や襟に擦れる場所には、どうしても毛玉が出ます。
これはそのマフラーの品質の問題ではなく、細い動物繊維で作られたもの全般に起こることです。柔らかさと引き換えの性質だと考えてください。
- 早めに取る。 大きく育つと、取ったあとが薄くなります
- 毛玉取り器を使うなら、平らに置いて、軽く当てる。持ち上げて引っ張ると余計な繊維まで刈ってしまいます
保管
- 畳んでしまう。 吊るすと自重で伸びます
- 必ずきれいにしてから。 皮脂と汗は虫の栄養になります。カシミヤは虫の食害を受けます
- 防虫剤を入れる。ただし直接触れさせない
- ビニールの袋に入れない。 湿気がこもります。不織布の袋か、綿の布で
お手入れに役立つアイテム
道具は3つで足ります。
① カシミヤ対応の中性洗剤
一般的な洗剤は、繊維が本来持つ油分まで落とします。カシミヤ・ウール対応と書かれたものを選んでください。押し洗いなら、洗剤を替えるだけで仕上がりが変わります。
② 獣毛のブラシ(柔らかいもの)
乾いたあとに軽くかけると、寝ていた毛羽が起きて風合いが戻ります。 硬いブラシは毛を削るので避けてください。カシミヤに使うなら、コシの弱い馬毛を。撫でるように、一方向へ。
③ 毛玉取り器
刃の当たりを調整できるタイプを選んでください。平らに置いて軽く当てるのが基本です。持ち上げて引っ張ると、余計な繊維まで刈ってしまいます。
自分でできない・自信がない方へ
バーバリーには、マフラー向けのアフターケアがあります
これは知っておく価値があります。
バーバリーの「ReBurberry」というアフターケアには、カシミヤのスカーフ向けのものがあります。公式の説明によれば——
- Refresh … 専門のクリーニングで、素材の柔らかな風合いを取り戻す
- Upcycle … 傷んだ箇所を、好みの刺繍やアップリケで修理する
「洗って風合いを戻す」というサービスを、ブランド自身が持っている。先ほど見た「洗って起毛させて作る」という工程を考えれば、筋が通っています。
捨てる前に、一度公式に相談してみてください。
クリーニング店に出す場合
「カシミヤのマフラーを、風合いを戻す仕上げまでお願いできますか」と聞いてみてください。
洗うこと自体は難しくありません。難しいのは、洗ったあとに毛羽を起こして、もとの手ざわりに戻すところです。そこまでやる前提があるかどうかで、仕上がりが変わります。
まとめ
- バーバリー・チェックは、1920年代にレインコートの「裏地」として始まりました。表に出る柄ではなかったのです
- 表に出たのは1967年。パリ店のバイヤーがコートから裏地を外し、スーツケースを包み、傘カバーを作ったのがアクセサリーの始まりだと公式は記しています
- チェックのカシミヤマフラーは1970年代に登場。いまチェックは登録商標です
- マフラーは1900年からジョンストンズ・オブ・エルギン(1797年創業)と作られています。1枚に30以上の工程、多くがいまも手作業
- 柔らかさの正体は、湧き水で洗い、チーゼルでブラッシングして起こした毛羽。柄はプリントではなく、糸を順番に並べて織り出したもの
- だから最大の禁止事項は「こすらない」。 毛羽が倒れると戻りません
- 洗うなら冷たい水で押し洗い、絞らず、平らに乾かす。乾いてから軽くブラシ
- 公式に「ReBurberry」のRefresh(風合いを戻すクリーニング)とUpcycle(刺繍で修理)があります
裏地から始まった柄が、100年たっていちばん有名な柄になりました。そのマフラーは、洗って、ブラシをかけて作られたものです。 手入れの仕方も、そこから素直に決まります。
これから買うなら
チェックのカシミヤマフラーを、新品で手に入れるなら、行き先は2つです。
これから買うなら
在庫と価格はよく変わります。購入前に、各ショップの表記と返品条件をご確認ください。
楽天市場で探す(新品のみ)
中古を除いた検索結果です。並行輸入品が中心になります。品物そのものは正規品ですが、国内正規店のアフターサービスは受けられないことが多いので、そこを納得したうえで選んでください。
この記事を書いた人

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。





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