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いちばん大事なことを先に書きます。
マッキントッシュのゴム引きコートは、ドライクリーニングに出せません。
これは私の意見ではなく、公式サイトの商品ページにそう書いてあります。それなのに、知らずに出してしまう方がいます。まずは、マッキントッシュのゴム引きコートのことを知っておく必要があります。ゴムが傷むと、もう元には戻りませんからね。
ただし、ゴム引きを扱えるお店もあります。頼み方は記事の後半で書きます。
もうひとつ、ややこしい話があります。「マッキントッシュ」という名前のブランドは、日本に複数あります。英国の本家と、三陽商会が展開しているものは、別のものです。買う場所も、お手入れの答えも変わります。
この記事では、この2つを整理します。まずは、そもそもどういうブランドなのかから。
マッキントッシュとはどんなブランド?
公式サイトはこう始まります。
マッキントッシュの歴史は、チャールズ・マッキントッシュが世界初の防水布——のちに「マッキントッシュクロス」と呼ばれる生地——を生み出した1823年にさかのぼります。
MACKINTOSH公式サイト「About Us」より(筆者訳)
1823年。200年以上前です。
始まりはブランドではなく、一枚の布でした。チャールズ・マッキントッシュはスコットランドの化学者で、2枚のコットンの間にゴムを挟んで、水を通さない生地を作ることに成功します。
「マッキントッシュ」は、普通名詞になりました
英語には mackintosh という単語があります。意味は「レインコート」です。
人の名前が、そのまま雨具を指す言葉になった。ブランドが有名になったのではなく、発明が言葉になった、という順番です。ここがこのブランドの特別なところだと思います。
作り方は、19世紀のままです
公式サイトの日本語ページに、製法が詳しく書かれています。要点を拾います。
- 素材は、2層のコットンをゴムで接着したボンデッドコットン
- 生地を裁断したあと、指で特殊なゴム溶液を塗って縫い目を接着し、密封する
- 接着した縫い目をプレスし、乾いたらローラーとブラシで余分を取る
- その上から防水テープを手で貼り付け、押し付けて、水の侵入を止める
- 最後に通気孔を打ち、ボタンを縫い付ける
公式の言葉で、いちばん印象に残ったのがここです。
「コートはすべて手作業で作られ、1人の職人が1着の衣服を最初から最後まで手掛けます。」
そして、こうも書かれています。「複雑で労働集約的な生産工程により、毎年生産されるコートの数は非常に限られており、最高水準の品質が保証されています。」
タグを見ると、それが分かります
日本の公式サイトには、こう書かれています。
ブランドラベルの下に、「Genuine Handmade」というラベルが、本物のハンドメイド製の証として縫い込まれる。

お手持ちの一着があれば、探してみてください。この記事の後半で、タグは何度も出てきます。
いまは、日本企業の傘下です
ここは意外に知られていません。
英国のマッキントッシュ社は、日本の商社である八木通商の傘下です。2007年に子会社化され、2012年3月に全株式が取得されました。2009年には日本法人のマッキントッシュジャパンが設立されています。
200年続いた英国の老舗を、日本の会社が支えている。そういう構図です。ただし、ゴム引きコートを作っているのは今もスコットランドです。
ここが混乱します|名前の似た3つのブランド
日本で「マッキントッシュ」と言うとき、指しているものが3つあります。
| 名前 | 誰が | 何を |
|---|---|---|
| MACKINTOSH(マッキントッシュ) | 英国の本家 | スコットランド製のゴム引きコート。日本での展開はマッキントッシュジャパン |
| MACKINTOSH LONDON(マッキントッシュ ロンドン) | 三陽商会(ライセンス契約) | 日本市場のために作られたブランド。2015年秋冬〜。コートに限らない総合コレクション |
| MACKINTOSH PHILOSOPHY(マッキントッシュ フィロソフィー) | 三陽商会(ライセンス契約) | 2007年秋冬〜。より日常的な価格帯 |
どれが良い・悪いという話ではありません。
ただ、お手入れの答えは変わります。英国本家のゴム引きコートは「ドライ不可」ですが、マッキントッシュ ロンドンのウールのコートなら、ふつうにドライクリーニングに出すものもあります。
「マッキントッシュだからこうすればいい」が成り立ちません。自分の一着がどれなのか、タグで確かめてください。
※なお、チャールズ・レニー・マッキントッシュという同姓のスコットランドの建築家がいますが、このブランドとは別の人物です。検索すると混ざって出てきます。
ブランド基礎データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 始まり | 1823年、チャールズ・マッキントッシュが世界初の防水布を発明 |
| 国 | イギリス・スコットランド |
| 生産 | ゴム引きコートは今もスコットランドで手作業 |
| 資本 | 日本の八木通商の傘下(2007年子会社化/2012年全株取得) |
| 代表素材 | ボンデッドコットン(ゴム引き)、ウール、コットン |
| 代表モデル | DUNKELD、BANTONなど |
| 家庭での洗濯 | ゴム引きは✕(ドライも✕)/ウールは品質表示による |
| お手入れ難易度 | ★★★★★ 出す店を選びます |
【クリーニング師が解説】同じ名前のコートで、お手入れが正反対でした
ここからが本題です。
公式のオンラインストアには、「BANTON」という同じ名前のコートが、ゴム引き版とウール版の両方で並んでいます。お手入れの欄を見比べてみました。
| BANTON | 素材の表示 | 公式のお手入れ |
|---|---|---|
| ゴム引き | 100%コットンボンデッド | 部分的な拭き取りのみ。洗濯機✕。ドライクリーニング✕ |
| ウール | ウール100% | ドライクリーニングのみ |
同じ名前のコートで、正反対です。
片方は「ドライだけにしてください」、もう片方は「ドライはしないでください」。ブランド名だけで判断すると、確実に間違えます。
なぜゴム引きはドライに出せないのか
ドライクリーニングは、水ではなく有機溶剤で洗う方法です。「やさしい洗い方」だと思われがちですが、油を溶かす力が強い洗い方です。
ゴムは、その溶剤に弱い。
マッキントッシュのゴム引きは、コットンとコットンの間にゴムを挟んで接着し、縫い目にはゴム糊とテープで止水加工をしています。つまり、ゴムと接着が命の作りです。そこへ溶剤をかけると、生地が硬くなったり、接着が浮いたり、防水が落ちたりすることがあります。
そして、いったんそうなったら戻せません。「ドライなら安心」は、この一着には通用しません。
公式が書いている、正しいお手入れ
ゴム引きの商品ページには、こう書かれています。
小さな汚れは、石けんと水で落とすことができます。石けんはやわらかいブラシでのみ塗布してください。アルコールやその他の化学薬品のクリーナーは、決して使用しないでください。
MACKINTOSH公式サイト 商品ページ「生地とお手入れ」より(筆者訳)
整理すると、やることは3つだけです。
- 汚れたところだけ、石けんと水で落とす
- 石けんはやわらかいブラシで塗る。こすらない
- アルコール、ベンジン、除光液、市販のしみ抜き剤は使わない
3つめが本当に大事です。「しみ抜きスプレーで叩けばいい」は、この生地に関しては禁止事項です。
雨に降られたあとは
ゴム引きは完全防水なので、雨そのものは怖くありません。問題はそのあとです。
- 表面の水滴を、やわらかい布で拭く
- 風通しのよい日陰に吊るして乾かす。直射日光と暖房の前は避ける
- 折りたたんで放置しない。ゴム引きは折り目が残りやすく、折れた部分から傷みます
- しまうときも吊るす。肩幅のあるハンガーで
暖房器具の前やクルマの中など、高温になる場所はゴムの大敵です。ここだけは覚えて帰ってください。
お店に出すときに伝えること
受付で、開口一番にこう言ってください。
「ゴム引きコートです。クリーニングできますか?」
そのうえで、次の3つを伝えると話が早くなります。
- タグの写真を見せる(「Genuine Handmade」の表示と、お手入れの記載)
- 汚れの場所と心当たり
- お直しの希望があるか(テープの浮き、ボタン、裏地)
そして、正直に書きます。断られることがあります。ゴム引きは、扱える店とそうでない店がはっきり分かれる品物です。断られたら、それは誠実な対応です。無理に受ける店より安心だと思ってください。またゴム引きコートは、通常のコース料金よりも高くなる傾向にあります。
自分でお手入れを覚えて、長く着用する。どうしても自分では手に負えないときは、ゴム引きを扱えるお店に相談する。個人的にはその考え方です。
お手入れに使う道具
公式が指定しているのは「やわらかいブラシ」と「石けんと水」だけです。それに沿ったものだけを挙げます。
石鹸や柔らかいブラシは、どこにでも売っているものでいいので、自分がこれというものをお使いください。ただし、ブラシでゴシゴシとこすることは厳禁です。
防水スプレーは紹介しません。ゴム引きはもともと完全防水なので必要がなく、公式も「化学薬品のクリーナーは決して使わない」としています。
修理・相談の窓口
200年続くブランドは、直して着るのが前提です。
- 日本の直営店 …… mackintosh.jp/stores
日本で買われた一着なら、まず購入店か日本の直営店に相談するのが早いです。
まとめ
- マッキントッシュは1823年、チャールズ・マッキントッシュの防水布の発明から始まりました
- 英語の
mackintosh=レインコート。発明が普通名詞になったブランドです - ゴム引きコートは今もスコットランドで、1人の職人が1着を最初から最後まで手作業で仕上げます
- タグのブランドラベルの下に「Genuine Handmade」が縫い込まれています
- 英国の本家は日本の八木通商の傘下(2007年子会社化/2012年全株取得)
- 日本にはMACKINTOSH/MACKINTOSH LONDON/MACKINTOSH PHILOSOPHYの3つがあり、後の2つは三陽商会のライセンスです
- 同じ「BANTON」でも、ゴム引きは「ドライ✕」、ウールは「ドライのみ」。正反対です
- ゴム引きの手入れは①部分的に ②石けんと水を、やわらかいブラシで ③薬剤は絶対に使わない
- 雨のあとは拭いて、日陰に吊るす。折らない。高温に近づけない
- お店には「ゴム引きです」と最初に伝える。断られたら、それは誠実な店です
同じイギリスで、まったく別の方法で「濡れない服」を作ったブランドもあります。
→ バーバリーってどんなブランド?ギャバジンとトレンチコートのお手入れも解説
→ トレンチコートの部品の意味|エポレット・ガンフラップ・Dリングは何のためにあるのか

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


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