ジュンヤ ワタナベの服を見ていると、タグに2つのブランド名が並んでいることがよくあります。
リーバイス、ザ・ノース・フェイス、トリッカーズ、ステューシー、ニードルズ。相手は毎シーズン変わります。売り場では、これを「Wネーム(ダブルネーム)」と呼んでいます。
この「Wネーム」こそ、ジュンヤ ワタナベ、とくにメンズのいちばんの看板だと思います。
ところが、公式Eショップの商品説明を1点ずつ読んでいくと、意外なことが分かりました。
- リーバイスのジャケットの形をしているのに、生地はデニムではないものがある
- 赤タブもリベットも付いているのに、中身は礼服用のウール
- パッチワークの服なのに、素材の欄には本体の生地しか書かれていない
形と中身が違う服は、扱い方を間違えやすい服でもあります。この記事では、ラインの整理と、Wネームの服の「中身」を、公式と専門メディアの情報だけで見ていきます。
まず、ラインは4つ(+終わったもの)
ジュンヤ ワタナベには、いま動いているラインが大きく分けて3つ、そしてコム デ ギャルソン オムのデザインがあります。
| ライン | 始まった年 | どんなライン |
|---|---|---|
| ジュンヤ ワタナベ(ウィメンズ) | 1992年 | 出発点。1992年に東京でデビュー、1993年からパリで発表 |
| ジュンヤ ワタナベ マン | 2001年 | メンズ。2001年にパリで初のメンズコレクション |
| アイ ジュンヤ ワタナベ マン | 2005年 | マンのセカンドライン |
| コム デ ギャルソン オム | 1978年〜 | 渡辺淳弥が2003年からデザインを担当 |
出典:Fashion Press「ジュンヤ ワタナベ」ブランドページ
名前が、2022年に短くなっています
もとの名前は「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」でした。
2022年春夏から「ジュンヤ ワタナベ」に変わり、メンズも「ジュンヤ ワタナベ マン」「アイ ジュンヤ ワタナベ マン」という表記になりました(Fashion Press、FASHIONSNAP)。
すでに終わったライン・企画
| 名前 | 期間 | 内容 |
|---|---|---|
| コム デ ギャルソン・ジュンヤ ワタナベ マン ピンク | 2003年〜2005年秋冬で終了 | レディスのライン |
| モンクレール ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン | 2004年発表 | ダウンのライン |
| Loewe and JUNYA WATANABE COMME des GARÇONS | 2013年発表 | ロエベとの協業 |
出典:Fashion Press「ジュンヤ ワタナベ」ブランドページ
ブランドの名前に、別のブランドの名前が最初から入っている。 Wネームの考え方は、ラインの名前の段階から始まっていたことが分かります。
アイコンは「Wネーム」——始まりはリーバイス
Fashion Pressの沿革には、こう書かれています。
2001年、初のメンズコレクションで、リーバイスとのコラボによるデニム中心のアイテムを発表。
メンズの第一歩が、もうWネームだったわけです。
そこから20年以上、リーバイスとの協業は続いています。最近の例を並べます。
| 時期 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 2021-22年秋冬(ウィメンズ) | 501の37年・47年・66年・77年モデルを再構築。ウィメンズでは初の協業 | WWDJAPAN 2021-03-19 |
| 2024年春夏(マン) | リーバイスのデニムの股上の部分だけをランダムにつないだパンツ。赤タブ付き、税込16万7,200円 | FASHIONSNAP 2023-07-20 |
| 2026年春夏(マン) | グレンチェック柄のリーバイス コラボパンツ | 伊勢丹新宿店の特集ページ |
WWDJAPANは2025年のコレクション評で、ジュンヤ ワタナベ マンを「デニムを軸にしたパッチワークやワーク&アウトドアのイメージが強かった」と書いています。
デニム、パッチワーク、ワーク。 この3つが、外から見たジュンヤ マンの顔です。
相手は、リーバイスだけではありません
WWDJAPANの2024年春夏のリポートには、1回のショーに出てきた協業相手が並んでいます。
シーピー カンパニー、パレス スケートボード、ステューシー、グレゴリー、ニューバランス、カーハート、リーバイス。

そこで紹介されている手法は「既存の服を解体して組み替える」。グレゴリーのバックパックを分解してジャケットにするといったものです。
ほかにも、ブルックス ブラザーズ(アンディ・ウォーホルの作品をパッチワークしたブレザー)、トリッカーズ、バラクータ(2008年発表)などの名前が、公式Eショップや媒体に出てきます。
公式Eショップで、Wネームの「中身」を読む
ここからが本題です。
コム デ ギャルソンの公式Eショップ(ドーバー ストリート マーケット ギンザの「DSMG E-SHOP」)に、2026年10月時点でジュンヤ ワタナベ マンの商品が39点載っていました。その商品説明を1点ずつ読みました。
リーバイスの形、礼服の生地
いちばん驚いたのが、この2点です。
① ウールのトラッカージャケット(リーバイスとのWネーム)
- リーバイスのジャケット(トラッカージャケット)がベース
- 生地は礼服向けの生地で知られる毛織物メーカー「兒玉毛織」の、黒いウールのタキシード生地
- 襟の裏や袖口に「KODAMA KEORI」「TUXEDO CLOTH」と入ったテープ
- 素材:毛100%
② タキシード型のジャケット(リーバイスとのWネーム)
- 光沢のあるサテン地(拝絹)のラペル、くるみボタン=タキシードの作り
- 左胸に、リーバイスの後ろポケットをなぞったステッチ・赤タブ・リベット付きのポケット
- 素材:毛100% × キュプラ64%・絹36%
(DSMG E-SHOP 商品説明より。価格は①110,000円、②176,000円)
①は「ワークウエアの形に、礼服の生地」。②は「礼服の形に、ワークウエアの部品」。 向きが逆なだけで、やっていることは同じです。
パンツも同じでした。リーバイスの古い型紙の脚に沿ってねじれる切り替えをそのまま使い、生地はモーニングコートと合わせて穿く縞のズボンの生地(コール地)、というものがあります。
名前は「リーバイス」でも、デニムとは限らない
公式Eショップのジュンヤ マンのリーバイス Wネームを見ると、生地は次のように分かれていました。
- ウール100%(タキシード生地、チェック、ストライプ、サージ)
- ウール65%・シルク21%・麻14%のチェックシャツ
- 麻59%・綿41%のオックスフォード
- 綿のデニム
「リーバイスのWネーム」と聞いて、デニムだと思い込まないでください。 ここがこの記事でいちばん伝えたいことです。
【クリーニング師が解説】Wネームの服は「形」ではなく「中身」で扱う
ここからは、現場の考え方です。公式のお手入れ表示そのものはEショップに載っていなかったので、必ず服の内側の洗濯表示を確認したうえで読んでください。
① リーバイス型でも、ウールなら家で洗わない
ジーンズやGジャンの形をしていると、洗濯機に入れたくなります。
でも中身がウールのタキシード生地なら、それは礼服を洗濯機で回すのと同じです。縮み、型崩れ、テカリ。デニムのつもりで扱うと、取り返しがつきません。「そんなことわかってるって」と言われると思いますが、この仕事を長くしていると、”うそぉ、それやるんだぁ”というお洋服に出会うことがあります。せっかくの素敵なお洋服。適切に扱ってあげましょう。
形を見ずに、タグの組成表示を見てください。
「毛」「絹」の文字があれば、家で洗う前に洗濯表示を確認し、迷ったら専門の店に相談するのが安全です。できれば、クリーニング店に出すのが安心です。
② リベットとサテンが同じ服にあるとき
②のタキシード型ジャケットには、金属のリベットと、光沢のあるサテンの襟が一緒に付いています。
アイロンやプレスの熱と圧力が、金属の部品の上からかかると、周りの生地に部品の形がうつる(アタリが出る)ことがあります。光沢のある生地ほど目立ちます。
- 家でアイロンをかけるなら、リベットの上は避ける。 当て布をして、部品のまわりだけ浮かせるように。温度には気をつけて。
- 襟のサテンはキュプラと絹。摩擦と水じみに弱い素材です。雨に濡れたら、こすらずに乾いた布で押さえてください
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③ パッチワークは「書いてある素材」がすべてではない
公式Eショップに、ブラックデニムのパンツにチェックのプリーツスカートを重ねた一本がありました。説明には「光沢のあるヘリンボーンやドット柄など、異素材を用いたパッチワーク」とあります。
ところが素材の欄は「綿95%・ポリウレタン5%」だけでした。
パッチワークの服は、素材の欄に本体の生地しか書かれていないことがあります。
縫い合わされた布は、それぞれ縮み方も、色の出方も違います。いちばん弱い布に合わせて扱うのが基本です。見た目に違う布が混ざっていたら、表示どおりの洗い方で大丈夫か、まず疑ってください。
ちなみに、ポリウレタンは伸び縮みのために入っている糸で、年数とともに少しずつ傷んでいく素材です。長くしまい込むより、着て、風を通すほうが状態を保ちやすいと思います。
④ 外せる部品は、外してから
同じパンツには、スパイク付きのチェーンと、プリーツスカートが取り外せると書かれています。
- 洗う前、お店に出す前に、外せるものは外す
- 外した部品は、なくさないように袋にまとめておく
- お店に出すときは、「付属品はこちらで預かっています」と伝える
金属の部品は、ほかの服や生地本体を傷つけることがあります。外すのがいちばん確実です。
⑤ 革とヴィンテージボタンの付いたジャケット
ウールチェックのテーラードジャケットで、ポケットに牛革、ボタンはヴィンテージというものもありました。
- 革は、ウールとはまったく別の扱いが必要な素材です。ウールに合わせた洗い方では、革が硬くなったり、色が出たりすることがあります
- ヴィンテージのボタンは、替えがききません。 割れや欠けが心配なら、お店で外して洗えるか相談してください
一着の中に違う素材が同居している。それがジュンヤ ワタナベの服の面白さで、同時に、扱いのむずかしさでもあります。
お店に出すときに伝えること
「ジュンヤの服です」だけでは、受ける側は中身が分かりません。次の3つを伝えてください。
- Wネームの相手の名前(リーバイス、ノース・フェイスなど)——形の手がかりになります
- タグの組成表示——「リーバイス型だけどウール」なのか、本当にデニムなのか
- 付属品と、違う素材の部分——リベット、サテンの襟、革のポケット、外せるチェーン
形はワーク、中身はフォーマル。 その「ずれ」を、先に伝えておくことがいちばんの予防になります。
まとめ
- ラインはジュンヤ ワタナベ(1992年〜)、ジュンヤ ワタナベ マン(2001年〜)、アイ ジュンヤ ワタナベ マン(2005年〜)。渡辺淳弥は2003年からコム デ ギャルソン オムもデザイン
- 2022年春夏に「ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン」から「ジュンヤ ワタナベ」へ。古いタグには COMME des GARÇONS の文字
- アイコンはWネーム(ダブルネーム)。始まりは2001年、初のメンズコレクションでのリーバイスとの協業
- 公式Eショップを読むと、リーバイス型でもウール100%のタキシード生地、タキシード型に赤タブとリベット、という服がある
- 「リーバイスのWネーム」=デニムとは限らない。 タグの組成表示を必ず見る
- リベットの上からアイロンをかけない。サテンの襟(キュプラ・絹)は摩擦と水じみに注意
- パッチワークは素材の欄が本体だけのことがある。いちばん弱い布に合わせて扱う
- 外せる部品は外してから。革やヴィンテージボタンが付いていたら、お店に相談を
ジュンヤ ワタナベというブランドの成り立ちは、1本目にまとめています。

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。

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