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2026年3月、パリ。コム デ ギャルソンの2026年秋冬コレクションのテーマは「Ultimately Black(究極の黒)」でした。
FASHIONSNAPは、これを1981年にパリのモード界を揺るがした「黒の衝撃」から45年の到達点、と書いています。
黒の服で世界を驚かせたブランドが、45年たって、もう一度「黒」に戻ってきた。この記事では、コム デ ギャルソンの成り立ちを公式とWWDJAPAN・FASHIONSNAPの報道で確認できたことだけでたどります。そのうえで、ギャルソンの服によく出てくる「製品縮絨」「製品染」という言葉を手がかりに、クリーニング師の目線で扱い方を整理します。
コム デ ギャルソンとはどんなブランド?
1969年、川久保玲が始めた
コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)は、1969年に川久保玲が始めたブランドです。2019年がブランドの50周年にあたる、とWWDJAPANは書いています(2019年7月)。
川久保玲は、若いころに繊維メーカーに就職し、社内でスタイリングの仕事をしていました。そこで求める服が見つからず、自分で服を作り始めたそうです。
「ファッションは、ビジネスのための素材だった」
WWDJAPANに載った米「WWD」記者のインタビューで、川久保玲は意外なことを話しています。
- ファッションを使ったのは偶然で、ファッションデザイナーになる決意はなかった
- ファッションは「ビジネスのための素材だった」
- 「私のビジネスはクリエイション、製造、販売だ」。売るつもりがなければ、作るのは無駄
- 目指したのは独立。そのための手法が「今まで見たことのない服」だった
(WWDJAPAN「米『WWD』記者が綴る川久保玲への畏敬」2019年7月より要約)
「見たことのない服」は、芸術のためではなく、独立した会社であり続けるための戦略だった。ここは、ギャルソンを理解するうえで大事なところだと思います。
1981年、パリで「黒の衝撃」
パリでコレクションを発表し始めたのは1981年です。FASHIONSNAPは、このときの衝撃を「黒の衝撃」と呼び、黒は45年たったいまもブランドの象徴であり続けている、と書いています。
2017年、メトロポリタン美術館
2017年には、ニューヨークのメトロポリタン美術館で川久保玲の展覧会が開かれました。WWDJAPANによると、存命のデザイナーがこの美術館で取り上げられたのは、1983年のイヴ・サンローラン以来2人目です。
受賞も多く、WWDJAPANが挙げているのは次のとおりです。
| 年 | 受賞 |
|---|---|
| 1986年 | FGIアワード |
| 2012年 | CFDA国際賞 |
| 2019年 | イサム・ノグチ賞(過去の受賞者に杉本博司、安藤忠雄など) |
ノグチ美術館は授賞理由に、「美やファッションに対する固定観念にあらがい、服に対する既成概念を打ち破ってきた」ことを挙げています(WWDJAPAN、2019年3月)。
2026年、「究極の黒」
そして冒頭の2026年秋冬コレクションです。FASHIONSNAPによると、川久保玲はコレクションノートにこう書いています。
I have come to realize that, after all, black is the colour for me
コム デ ギャルソン 2026年秋冬コレクションノートより(FASHIONSNAP、2026年3月)
「結局、黒こそが自分の色だと気づいた」。 さらに黒を「反骨精神を体現する色」とも書いています。
名前の由来は?
「コム デ ギャルソン」はフランス語で「少年のように」という意味です。フランソワーズ・アルディの1962年の曲の一節から取った、という話がよく紹介されています。
ただ、この由来について、公式や川久保玲本人の説明は確認できませんでした。 この記事では「そう言われている」までにしておきます。
ブランド基礎データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 始まり | 1969年 |
| 国 | 日本 |
| 創業者 | 川久保玲 |
| 代表的な発表の場 | パリ(1981年〜) |
| 象徴的な色 | 黒 |
| 主な素材 | ひとことでは言えない(ウールの縮絨、製品染めのリネンなど、品番ごとに違う) |
| 家庭での洗濯 | 品番ごとに違う。必ず洗濯表示で確認 |
| お手入れ難易度(筆者の目安) | ★★★★☆ 加工が「仕上がりの一部」になっている服が多い |
ラインがたくさんあります
コム デ ギャルソンには、名前の違うラインがいくつもあります。この記事で確認できたものだけ挙げます。
| ライン | 確認できたこと | 出典 |
|---|---|---|
| コム デ ギャルソン | 川久保玲のコレクション。パリで発表 | WWDJAPAN |
| ジュンヤ ワタナベ・コム デ ギャルソン | デザイナーは渡辺淳弥。パリで発表 | WWDJAPAN |
| ノワール ケイ ニノミヤ | デザイナーは二宮啓。パリで発表 | WWDJAPAN |
| プレイ・コム デ ギャルソン | 2003年スタート。ハートのロゴは、グラフィックアーティストのフィリップ・パゴウスキーによるもの | WWDJAPAN(2019年) |
| コム デ ギャルソン・オム プリュス | メンズ。パリ・メンズで発表 | WWDJAPAN |
| コム デ ギャルソン・オム/シャツ/財布/パルファム など | 公式の販売店のオンラインストアに、それぞれの名前で並んでいる | DSMG E-SHOP |
公式サイト(comme-des-garcons.com)のトップには、コム デ ギャルソン、ジュンヤ ワタナベ、ノワールの3つが並んでいます。
ラインごとの違いは、別の記事で整理する予定です。
売っている場所|ドーバー ストリート マーケット ギンザ
東京・銀座のドーバー ストリート マーケット ギンザは、WWDJAPANによると川久保玲がディレクションするセレクトショップです。「美しきカオス」を掲げ、ラグジュアリーからストリートまで約300ブランドを扱っています(2023年2月)。
公式のオンラインストア「DSMG E-SHOP」もあり、2019年には、ここでプレイ・コム デ ギャルソンの販売が始まりました。WWDJAPANは、これを「同ブランドを取り扱う国内初の公式オンラインストア」と伝えています。
商品ページに出てくる「製品縮絨」「製品染」
このブログでは、ブランドのお手入れを考えるとき、公式の商品ページに書かれていることを出発点にしています。
ギャルソンの公式サイトには、お手入れの案内のページが見当たりませんでした。 そこで、公式の販売店であるDSMG E-SHOPに並んでいたギャルソン関連の商品(2026年10月時点で309点)の説明文を読んでみました。
すると、ほかのブランドではあまり見ない言葉が、くり返し出てきます。
| 説明文に出てくる言葉 | 出てきた点数 | 例 |
|---|---|---|
| 製品縮絨(せいひんしゅくじゅう) | 8点 | 「製品縮絨を施したウールサージを使用したジップアップジャケット」(オム) |
| 製品染(せいひんぞめ) | 8点 | 「エステルリネンギャバ 製品染」麻62%・ポリエステル38%(オム) |
| 製品洗イ | 1点 | 「綿ブロードストライプ 製品洗イ」綿100%(プレイ) |
| 日本製 | 37点 | プレイのTシャツなど |
(DSMG E-SHOPの商品説明文から集計。2026年10月確認)
「製品◯◯」は、縫ったあとの加工
ここで言う「製品」は、縫い上がった服のことです。
- 製品縮絨 … 服の形に縫い上げてから、ウールを縮ませて詰まった風合いにする加工
- 製品染 … 服の形に縫い上げてから、染める加工
- 製品洗い … 服の形に縫い上げてから、洗いをかける加工
つまり、縮んだ感じ、色の深さ、くたっとした表情は、店に並んだ時点で「完成した姿」です。
📄 縮絨について詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考になります。
今あらためて知りたい、[COMME des GARCONS]の縮絨の魅力(RAGTAG)
1着の中に、別の素材が入っていることも
もう一つ、説明文を読んでいて気づいたことがあります。
オムのシャツに、「綿ブロードとウールサージを組み合わせ、製品縮絨を施したシャツ」という商品がありました。綿とウールが、1着の中で切り替えられているのです。
ところが、同じ商品の素材欄には「綿100%」としか書かれていませんでした(2026年10月時点)。通販の素材欄だけでは、全部の素材が分からないことがある、ということです。
【クリーニング師が解説】お手入れの注意点
ここからは、上の事実をもとにした、扱う立場からの話です。ブランドが言っていることではありません。
いちばん大事なこと:タグを見る
① 判断の根拠は、服の内側の洗濯表示だけ。
ギャルソンは、同じブランド名でも品番ごとに素材も加工も違います。「ギャルソンだからドライ」「ギャルソンだから洗えない」とは言えません。お家洗いをしたい場合は、まず手洗い表示などがついているかを確認してください。
② 素材欄が1つでも、実物のタグを見る。
上で書いたとおり、通販の素材欄に出ていない素材が、1着の中に入っていることがあります。タグの「◯◯部分:」という但し書きまで読んでください。
③ 「製品縮絨」「製品染」と書いてあったら、店にそう伝える。
縮んだ風合いや色の表情が「最初からそういう仕上がり」だと店が知っていれば、それを守る前提で扱えます。購入時の説明やタグ、品番が分かるものがあれば、一緒に見せてください。
④ 縫い目のねじれや切りっぱなしの端を「傷み」と思わない。
「今まで見たことのない服」を作るブランドです。ほつれに見える部分が、最初からのデザインであることがあります。気になったら、買ったお店に「これは最初からの仕様ですか」と聞くのがいちばん確実です。
家でできること
着たあとにブラシ。 ウールの服は、着たあとにほこりを払っておくのが基本です。洋服ブラシで上から下へ。
しまうときは、通気性のあるカバーで。 クリーニングから戻ったビニールのカバーは外して、不織布などのカバーに替えてください。
黒い服は、日に当てっぱなしにしない。 窓辺に吊るしたままにしないでください。変色の原因になります。
迷ったら、買ったお店へ
ギャルソンの服は、加工や仕様の判断が、見た目だけでは難しいものが多いです。
- まず、買ったお店(直営店やドーバー ストリート マーケット ギンザなど)に、品番を伝えて相談する
- クリーニングに出すときは、「製品縮絨」「製品染」などの言葉と、気になる場所を伝える
アイロンはかけて欲しくないなどの要望は、必ず受付時に伝えることが大切です。
お手入れに役立つアイテム
📄 コム デ ギャルソン・オム「ウールサージ 製品縮絨 ジャケット」(三越伊勢丹オンラインストア)
▲この記事で説明した「縮絨」の服です。商品名に「製品縮絨」と入っているのが目印です。
📄 コム デ ギャルソン・オム「エステルサージ 製品染 ジャケット」(三越伊勢丹オンラインストア)
▲こちらは「製品染め」の服です。商品名の「製品染」が、縫ったあとに染めたしるしです。
三越伊勢丹では、たくさんのコム デ ギャルソン オムが見られます。【三越伊勢丹】COMME des GARCONS HOMME (Men)/コム デ ギャルソン オム
まとめ
- コム デ ギャルソンは1969年に川久保玲が始めたブランド。2019年に50周年
- 川久保玲は、ファッションは「ビジネスのための素材だった」、目指したのは独立で、その手法が「今まで見たことのない服」だったと話しています(WWDJAPAN)
- 1981年、パリで「黒の衝撃」。2026年秋冬のテーマは「Ultimately Black(究極の黒)」で、川久保玲は「黒こそが自分の色」と書きました(FASHIONSNAP)
- 2017年にメトロポリタン美術館で展覧会。存命のデザイナーとしてはイヴ・サンローラン以来2人目(WWDJAPAN)
- 名前の由来(フランソワーズ・アルディの曲)は、公式・本人の説明を確認できませんでした
- 公式の販売店の商品説明には「製品縮絨」「製品染」「製品洗イ」がくり返し出てきます。縫ったあとの加工で、店に並んだ時点の風合いが完成形
- お手入れの判断は洗濯表示だけが根拠。1着に別の素材が入っていることもあるので、タグの但し書きまで読んで、加工の名前と一緒に店に伝える
「今まで見たことのない服」は、扱う側にとっても、見たことのない服です。だからこそ、分からないところは、作った側とお店に聞く。 クリーニングに出す時も、任せっぱなしではなく、仕上がりを指定したり、やって欲しくないことを伝えてください。それがこのギャルソンというブランドのいちばんの取扱いだと思います。

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


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