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カナダグースのダウンのタグを見ると、「手洗い可」と書いてあることがあります。
ところが公式サイトのよくある質問には、こうあります。
「家庭での洗濯は非常に難しいため専門のクリーニング店へご依頼ください。」
矛盾しているように見えますが、矛盾はしていません。「できる」と「おすすめする」は別の話だからです。
この記事では、カナダグースの成り立ちを見たうえで、公式が書いているお手入れの指示を読み解きます。公式のケアガイドが、これまで扱ったどのブランドよりも具体的でした。
そして最後に、修理が「どこで買ったか」で変わるという、知らないと困る話を書きます。
カナダグースとはどんなブランド?
公式の沿革ページから拾います。
1957年、トロントの小さな倉庫から
サム・ティックがカナダへ移住し、1957年、トロントで「Metro Sportswear Ltd.(メトロ・スポーツウェア社)」を設立しました。扱っていたのはウールベスト、レインコート、スノーモービルウェアです。
最初からダウンの会社だったわけではありません。
ダウン充填機の発明が、転機でした
1970年代、サム・ティックの義理の息子デイビッド・リースが入社します。
公式にはこうあります。「大容量対応のダウン充填機を発明してメトロ・スポーツウェアの新たな時代を切り開きました」。そして彼は、後にカナダグースとなるレーベル「スノーグース」を立ち上げます。
機械の発明が、ブランドを作った。こういう始まり方は珍しいと思います。
「ビッグレッド」は、南極の研究者のために作られました
1980年代、公式によれば「地球上で最も過酷な環境のひとつである南極・マクマード基地に滞在する研究者たちのニーズに応えるため」に開発されたのが、エクスペディション パーカです。
愛称は「ビッグレッド」。いまもブランドのアイコンです。
1982年、エベレスト
1982年、メトロ・スポーツウェアが特注したパーカを着たローリー・スクレスレットが、カナダ人として初めてエベレスト登頂に成功しました。
このパーカは「ビッグマウンテン」と呼ばれ、2011年に「スクレスレット パーカ」として復刻されています。
「メイド・イン・カナダ」を打ち出したのは3代目
1997年、サム・ティックの孫でデイビッド・リースの息子であるダニ・リースが入社。2001年に社長兼CEOに就任します。
公式いわく、彼はブランドの成長を加速させるとともに、「メイド・イン・カナダ」へのこだわりを明確に打ち出した。
そして現在の製造体制が、公式に具体的に書かれています。
現在、私たちはトロント近郊に3か所、ウィニペグに3か所、ケベックに1か所の製造施設を所有・運営しており、計7か所で製品づくりを行っています。
カナダグース公式サイト「Our History」より
毛皮をやめました
2021年、カナダグースは「2022年末までに毛皮の使用を廃止する」と宣言しました。同年、ブランドおよび製造業者として責任あるダウン基準(RDS)の認証も取得しています(いずれも公式の沿革より)。
つまり、年式によってファーが付いているものと、付いていないものがあります。後のお手入れの話に効いてきます。
日本法人は2022年設立
2022年、長年のパートナーである株式会社サザビーリーグと合弁会社「カナダグースジャパン」を設立(公式沿革)。
WWD JAPANによれば、サザビーリーグは2015年に日本での独占販売契約を結んでおり、合弁は50:50の共同出資とのことです。
ブランド基礎データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 創業 | 1957年(Metro Sportswear Ltd.として) |
| 創業地 | カナダ・トロント |
| 創業者 | サム・ティック |
| 現CEO | ダニ・リース(創業者の孫/2001年〜) |
| 製造 | カナダ国内に自社の製造施設7か所(トロント近郊3・ウィニペグ3・ケベック1) |
| アイコン | エクスペディション パーカ(通称ビッグレッド) |
| 毛皮 | 2022年末までに使用廃止を宣言(2021年発表) |
| ダウン | RDS認証(2021年取得) |
| 日本法人 | カナダグースジャパン(2022年・サザビーリーグとの合弁) |
| 家庭での洗濯 | 公式は「非常に難しい」として専門店をすすめています |
| お手入れ難易度 | ★★★★☆ タグの表示より、公式の案内が厳しめ |
公式が説明している3つの言葉
カナダグースを調べていると必ず出てくる言葉を、公式のよくある質問から引きます。
TEI(サーマル・エクスペリエンス・インデックス)
カナダグースでは、サーマル・エクスペリエンス・インデックス(TEI)と呼ばれる独自の評価システムを開発し、第三者機関によるテストを行っています。TEI指数は、お客様の体感指数と暖かさに基づいて、適切な製品を見つけるのに役立ちます。(中略)この5つの評価システムは、豊富なコレクションからお客様にぴったりの製品をお選びいただけるよう設定されています。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
暖かさを5段階で示す、自社の指標です。第三者機関のテストを通していると明記されています。
フィルパワー
フィルパワーとはダウンのかさ高、つまり「ふんわり感」を表す単位です。カナダグースの製品は標準的な625、675、750、800フィルパワーを使用しています。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
数字が大きいほど、同じ重さでよく膨らむということです。暖かさは、ダウンの量とこのかさ高で決まります。
ディスクロゴ
カナダグースのディスクロゴは、カナダグース製品の質の高さと信頼性を表すシンボルであり、製品に取り付けられています。北極の氷冠と一緒に経度と緯度が描かれた、昔の北極の地図のようなデザインが特徴です。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
あの腕のワッペンは、北極の地図でした。
【クリーニング師が解説】タグは「手洗い可」。でも公式は止めています
ここが本題です。
国内の正規取扱店に出ているカナダグースから、品質表示を書き写しました。
| 商品 | 価格 | 中わた・素材 | 原産国 | 洗濯表示 |
|---|---|---|---|---|
| ロッジ ジャケット(日本限定) | ¥149,600 | ダウン90% フェザー10% | カナダ | 手洗い可 |
| ロッジ フーディ(日本限定) | ¥157,300 | ダウン90% フェザー10% | カナダ | 手洗い可 |
| チェルシー パーカ(日本限定) | ¥231,000 | ダウン90% フェザー10% | カナダ | 手洗い可 |
| クロフトン(ブラックレーベル) | ¥209,000 | ダウン90% フェザー10% | カナダ | 手洗い可 |
| チリワック フリース ボンバー | ¥125,400 | 毛60%ほか | カナダ | クリーニング可 |
| シムコー フリース ジャケット | ¥125,400 | 毛56%ほか | ポルトガル | クリーニング可 |
※「ブラックレーベル」は、腕のワッペンが黒一色になっているラインのことです。いつもの赤・白・青のワッペンとは違い、街で着ることを意識したすっきりしたデザインが特徴です。
ダウンの4点は、すべて「手洗い可」でした。
ところが公式のよくある質問には、こうあります。
家庭での洗濯は非常に難しいため専門のクリーニング店へご依頼ください。またクリーニングの際は外せる付属品はすべて取り外してそれぞれの洗濯表示をご確認ください。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
「できる」と「すすめる」は、別の話です
洗濯表示は「その方法で洗っても生地が壊れない」という表示です。「うまく仕上がる」という保証ではありません。
ダウンの家庭洗いが難しいのは、洗う工程ではなく乾かす工程です。
- 中の羽毛が乾ききるまでに丸一日以上かかります
- 生乾きのまま置くとにおいが出ます
- 羽毛が片側に寄って固まると、元の膨らみには戻りません
- ファーが付いていれば、そこは別の扱いになります
23万円のパーカで練習する必要はありません。公式が「非常に難しい」と書いているのは、そういう意味だと思います。
「メイド・イン・カナダ」はどこまでか
公式は「メイド・イン・カナダへのこだわり」を掲げ、カナダ国内に自社の製造施設を7か所持っていると書いています。
実際、上の表のダウン製品は4点とも「原産国:カナダ」でした。ウールのフリース(チリワック)もカナダ製です。
ただし——シムコー フリース ジャケットだけ、原産国がポルトガルでした。
これは「嘘がある」という話ではありません。
公式が言っているのは「自社の製造施設をカナダに7か所持っている」ことであって、「全製品がカナダ製」とは書いていません。
正確に言うなら、ダウンの主力はカナダ製。ただし全品ではない。気になる方はタグの原産国を見てください。
公式のお手入れガイドが、かなり具体的です
公式の「製品のお手入れについて」は、これまでこのブログで扱ったどのブランドより具体的でした。順に見ます。
羽が出てきたときの対処が、他ブランドと違います
中わたの吹き出しがある場合、吹き出している箇所の穴を広げたり、生地をカットしないよう気を付けながら、細かく柔らかいダウンの場合ははらう、または抜き取ります。軸のあるフェザーの場合は吹き出した箇所を生地を切らないようカットして残りを押し込みます。
カナダグース公式サイト「製品のお手入れについて」より
ここ、驚きました。
ダウンの羽抜けについて、「引っ張らずに内部へ押し込む」と案内するブランドもあります。ところがカナダグースは、細かいダウンは「はらう、または抜き取る」、軸のあるフェザーは「カットして残りを押し込む」と書いています。
ブランドによって指示が違うということです。自分の一着のブランドが何と言っているかを見てください。
「白化現象」について書かれています
白化現象は主に摩擦が起因します。連続着用は避け、リュックのご使用やアイロン掛けを控えめにし、少し汚れが付いた場合は水で濡らし固く絞った柔らかい布で除去してください。
カナダグース公式サイト「製品のお手入れについて」より
濃い色のナイロンで、擦れた部分が白っぽく見えてくる現象です。公式が原因を「摩擦」と名指ししています。
リュックが名指しされているのは実務的です。毎日同じ肩に掛けていれば、そこだけ擦れます。
袖口もよく白っぽくなっていくのは、しょうがないことです。
そのほか、公式が挙げていること
- デリケートな服と合わせるときは、内側のブランドラベル(メインラベル)との擦れや引っ掛かりに注意する
- ファーや染料による特殊なにおいを感じたら、風通しの良いところで陰干しする
- ライトウェイトジャケットのたたみジワは、アイロンを直接あてずに、手で押さえ広げながらスチームで伸ばす
- フリースの毛羽立ちや毛玉には静電気も関係する。エチケットブラシで毛並みを整え、連続着用を避ける
保管は、公式が7手順で書いています
オフシーズンの保管について、公式の手順をまとめます。
- できる限りきれいな状態で収納する。公式いわく「ほこり、汗、油脂などの汚れは徐々に生地を劣化させる原因となります」
- トリムなどの付属品は取り外して、各洗濯表示を確認する
- ファーは取り外せる場合は取り外し、毛や革が型崩れしないように、前後に余裕のある場所に縦方向に吊るす
- 幅広のハンガーにゆったりとかける。湿気の少ない暗所が最適
- 通気性のある衣類カバーをかける
- 狭いスペースで押しつぶされないように、間隔をあけて保管する
- 定期的に風通しをする
公式は、この手順の最後をこう結んでいます。
「正しいお手入れをすることで、カナダグースのジャケットは長くご着用いただけます。」
修理は「どこで買ったか」で変わります
ここが、この記事でいちばんお伝えしたいところです。
公式のよくある質問に、修理の条件がはっきり書かれています。
カナダグース製品に関して修理が必要になった場合、基本的には商品を購入されたお店(日本国内直営店・日本公式オンラインストア・日本国内正規取扱店)へご連絡をお願いいたします。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
そして、対象外になるものが3つ明記されています。
公式のよくある質問より。
- 海外で購入した商品、公式サイト以外で販売されている商品 …… 公式サイトでは「当サイトでご購入された商品に関してのみの対応」(例外として、アプリで直営店での購入履歴が確認できる場合は対応可能)
- アウトレット店舗での購入品 …… 「修理対象外となります」
- CANADA GOOSE Generationsで購入した製品 …… 「修理対象外となります」
並行輸入品や海外で買った一着は、公式の修理が受けられない可能性があります。
安く買えたとしても、10年着るつもりなら、ここは効いてきます。買う前に知っておきたい話です。
なお公式は、修理の可否は現物を預かってから判断するとしています。費用も期間も、内容によって変わるとのことです。まずは購入先に相談してください。
公式の中古サービスがあります
CANADA GOOSE Generations(カナダグース ジェネレーションズ)。公式の説明はこうです。
CANADA GOOSE Generationsは、ブランド認定の循環サービスです。お客様が過去に購入した製品の下取りや、洗浄・補修を施した中古品を販売します。
カナダグース公式サイト「よくあるご質問」より
公式の沿革によれば2023年に米国・カナダで開始されたもので、日本の公式サイトにも「プレラブド」として下取り申請の窓口があります。
ブランド自身が洗って直して売り直す。高価なアウターの買い方として、選択肢が一つ増えたということです。
ただし先ほどのとおり、Generationsで買った製品は修理対象外です。そこは納得したうえで選んでください。
お手入れに使う道具
公式が名前を挙げているものだけを紹介します。
ダウン専用洗剤は紹介しません。
公式が「家庭での洗濯は非常に難しいため専門のクリーニング店へ」と書いているブランドで、家庭洗い用の洗剤をすすめるのは筋が通らないためです。
幅広のハンガー例:Schott ウッドハンガー(mix.tokyo・¥2,750)
公式が「幅広のハンガーにゆったりとかけます」と名指ししています。針金の細いものだと肩に跡が残ります。ダウンは肩の形が崩れると戻りにくい服です。







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