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冬の街で必ず見かける、袖のワッペン。モンクレールは「高いダウン」の代名詞のように語られていますが、もとは山で事故に遭わないための道具を作っていた会社です。
そして、お手入れの情報がこれほど食い違うブランドも珍しいと思います。「水洗いがいい」「いや専門店へ」——調べるほど分からなくなる・・・💦なんて人も多いでしょう。
この記事では、ブランドの成り立ちを追ったうえで、モンクレール公式が何と言っているのかを調べてみました。そのうえで、クリーニング師として現場で思うことを付け加えます。
MONCLERとはどんなブランド?
モンクレールは1952年、フランス・グルノーブル郊外の小さな村で生まれました。創業者はルネ・ラミヨンとアンドレ・バンサン。
ブランド名は、その村の名前から来ています。モネスティエ・ド・クレルモン(Monestier de Clermont)。この「Mon」と「Cler」をつないだのがMONCLERです。地名がそのまま社名になっているブランドは、意外と多くありません。
創業当初に作っていたのは、服ではなくテントや寝袋でした。山で使う道具の会社です。転機は、地元の登山家リオネル・テレイをテクニカルアドバイザーに迎えたこと。ここから、本気の高所で使える防寒着の開発が始まります。
実績は早々に付いてきました。1954年のイタリア・カラコルム遠征(K2)、1955年のフランス・マカルー遠征に装備を提供。1968年のグルノーブル冬季オリンピックでは、フランス代表チームの公式ウェアに採用されます。いま製品に使われている雄鶏やトリコロールの意匠は、このあたりの記憶とつながっています。
面白いのは1980年代です。イタリア・ミラノの若者たちの間で大流行し、当時は年間およそ4万着のうち3万着がミラノ周辺で売れた、と言われています。山の道具が、都市の若者の定番になった瞬間です。
そして2003年、レモ・ルッフィーニがブランドを買収。ここから現在のラグジュアリー路線が始まり、2013年にはミラノ証券取引所に上場しました。「山の道具」から「街の高級品」へ。この二重性が、いまのモンクレールの正体だと思います。
ブランド基礎データ
| 創業 | 1952年 |
| 創業国 | フランス(グルノーブル郊外 モネスティエ・ド・クレルモン) |
| 創業者 | ルネ・ラミヨン/アンドレ・バンサン |
| 出発点 | 登山用のテント・寝袋。のちに高所用の防寒着へ |
| 代表アイテム | ダウンジャケット(マヤ、エベレスト、カラコルムなど) |
| 主な素材 | グースダウン、ナイロン(表地) |
| 家庭での洗濯 | △ 条件つき(公式は「大半はドライクリーニング推奨」。取り扱い表示に記載があれば家庭洗濯が可能な場合も) |
| お手入れ難易度 | ★★★★☆(乾かし方で仕上がりが決まる) |
ダウンという素材と、モンクレールの「DIST」
ダウンは羽毛です。正確には、水鳥の胸まわりに生えているタンポポの綿毛のような部分を指します。羽根(フェザー)のような芯がなく、空気をたっぷり含む。この空気の層が体温を逃さないので、暖かい。
つまりダウンジャケットの性能は、中の羽毛がどれだけふくらんでいるかでほぼ決まります。ここが、後のお手入れの話に直結します。羽毛が潰れたり、固まったりすれば、それだけで暖かくなくなるということです。
モンクレールは、このダウンの品質と出どころについてDIST(Down Integrity System and Traceability)という独自の基準を持っています。公式サイトによれば、2015年以降、同社が購入するダウンは100%この基準で追跡・認証されたものです。
DISTが定めているのは、大きく4つ。
- ダウンは食用の副産物として、飼育された水鳥からのみ得ること
- 生きたままの羽毛採取(ライブプラッキング)や強制給餌を一切認めないこと
- 原材料から製品までの流れを追跡できること
- ダウンそのものの品質基準
しかも認証は独立した第三者機関が行い、その監査結果をさらに別の認定機関が検証する、という二重の仕組みになっています。値段の理由を素材そのものではなく出どころの管理に置いているのは、覚えておいていい特徴だと思います。
【クリーニング師が解説】お手入れの注意点
まず結論:公式は「ドライクリーニング」を推奨しています
ここが、ネット上でいちばん混乱している部分です。
モンクレール公式サイトのFAQには、こう書かれています。
モンクレールのジャケットの大半は、ドライクリーニングに出すことをお薦めしています。
具体的なクリーニングの方法については、モンクレールの衣服の内側に取り付けられている取り扱いラベルを必ずご参照ください。
取り扱い表示に記載があれば、ご家庭で洗濯できる場合もあります。
一方で、ネットを検索すると「ドライクリーニングでは汗が落ちない」「水洗いのほうが適している」という説明も多く出てきます。これは主に、クリーニングを請け負う側が書いているものも多くあります。
どちらが正しい、という書き方はしません。汗が水溶性であること自体は事実ですし、水洗いを得意とする業者がいるのも本当です。ただ、このブログで断定できるのは「公式はこう言っている」というところまでです。
現場感覚でお伝えできるのは、順番の話です。①その一着の取り扱い表示を読む → ②公式の指示を確認する → ③迷ったら、洗う前に業者に相談する。この順番を飛ばして自己流で洗ったものは、戻せないことがあります。
家庭で洗う場合(公式が挙げている注意点)
取り扱い表示に家庭洗濯の記載がある場合に限ります。個人的には、モンクレールのような高級ダウンは、クリーニング業者や専門店に任せるのが安全です。個人的にも、家で洗うというのは、なかなか難しいのかなとも思いますが、中古で買ったから、だめになったらなったでいいか〜とか、特に作業着のように着てるという感覚で着ているなら、自己責任でいいかなとも思います。そのうえで、公式は次の点を挙げています。
- 洗濯機の使用が認められている場合でも、洗濯物を入れすぎない。できれば、1点で洗う。
- 水に浸しっぱなしにしないダウン専用洗剤
- 平干しする
- 乾燥中は一定時間ごとにジャケットを動かし、キルティングを軽く圧迫してダウンが均等になるよう調整する
- ナイロン以外の生地(フランネル、ベルベットなど)は、洗濯の最後に衣類用ブラシでブラッシングする
- ファーやレザーの付いたものは専門業者へ
公式を踏まえて、私が思うことは - 自分で無理をして洗わない
- 新しいうちは、専門業者におねがいする。
- 異素材の組み合わせは、洗濯表示でお家洗濯ができても、きれいに仕上がらないこともある。
- 革製品がついたものは、洗うと色がでることがあり、戻らないこともある
- 脱水はしっかりとしないと中の水分が残って、乾くまでに時間がかかる。しかし脱水のしすぎも、しわがつき、アイロンがけが必須となる。
- 乾燥は、しっかりとしないと羽毛がきれいに均一に膨らまないなど
あげればキリがないんですが、こういうことを踏まえて勉強をしているクリーニング店さんは、コースによってそのダウンにあった洗いを提供してくれます。
香水と消毒液に、気をつけてください
公式が最初に挙げている注意点は、洗い方ではありません。「香水、化粧品、手指消毒剤などのオイルまたはアルコールベースの物質との接触は避けてください。生地に悪影響を与え、落とせない汚れの原因になる可能性があります」とされています。
「落とせない」と書いてあるところが重要です。手指消毒剤が当たり前になった今、これは現実的なリスクです。袖口や襟元に付きやすいので、アルコール消毒をしてから羽織る、香水は服を着る前につける、という順番を習慣にしておくと防げます。
そのほか、公式が挙げているのは次のような点です。
- 大きな汚れは、生地に染み込む前に早く処置する
- 洗うときは、ファスナーのプルタブなどの金具を覆ってから。洗濯中に生地を傷つけるのを防ぐためです
- 表面がざらついたもの(壁、机の角、ザラザラした鞄など)との接触を避ける。擦れて糸が出ます
保管
公式の指示はシンプルです。涼しく乾燥した場所で、圧縮せず、ハンガーに吊るして保管する。
- 圧縮袋に入れない(羽毛が潰れて戻らなくなります)
- 詰め込まない・折りたたまない。刺繍やファー、レザーの付属が傷みます
- 直射日光、高温多湿を避ける
- ときどき取り出して、風を通す
夏のあいだ、クローゼットの奥で圧縮されたまま次の冬を迎える——これがダウンをいちばん傷める保管です。ハンガーの肩幅が足りないと肩が落ちるので、厚みのあるハンガーに替えておくと安心です。
よくSNSで圧縮袋を使った商品のものを見ますが、ダウンを潰してしまっている動画があります。
一見、クローゼットがすっきりしていいように思いますが、クリーニング師の観点から、中の羽毛が潰れるほうがよくないですよ。一度折れ曲がった中の羽毛はもとに戻りません。また乾燥すれば、新しい間はふっくらするかもしれませんが、何年もくりかえしていると、中の羽毛がバラバラになってしまい、ダウンの温かさと膨らみがもとに戻らなくなります。

お手入れに役立つアイテム
肩幅のある厚手のハンガー
公式は「圧縮せず吊るして保管」と指示しています。ただし細いハンガーだと肩に跡が付きます。アウターの重さを受けられる厚みのあるものを、1本持っておくと保管の質が変わります。
自分でできない・自信がない方へ
モンクレールには公式のアフターケアがあります
意外と知られていませんが、モンクレールは自社でアフターケア(修理・メンテナンス)のサービスを持っています。公式サイトの申し込みフォームから依頼すると、専門スタッフが状態を確認したうえで、修理やお仕立て直しの内容を提案してくれる仕組みです。
- 生地の破れ、ファスナーやプルタブの不具合
- 付属(ファーなど)の交換
- どう扱えばいいか分からない、という相談そのもの
まずここに聞いてしまうのが、いちばん確実です。判断に困ったときの相談先を持っているブランドは、それだけで安心感が違います。
クリーニングに出す場合
洗いそのものについては、取り扱い表示を確認したうえで、その内容を扱える業者かどうかを先に確かめてください。
ファーやレザーが付いているものは、公式も専門業者に任せるよう書いています。取り外せるファーは、外して別に扱うのが基本です。
まとめ
- 1952年フランス創業。もとは登山用のテントと寝袋の会社。社名は創業地モネスティエ・ド・クレルモンの略
- 1968年グルノーブル五輪でフランス代表に採用。1980年代にミラノの若者へ広がり、2003年から現在のラグジュアリー路線へ
- ダウンの出どころはDISTという独自基準で管理。2015年以降、購入するダウンは100%が認証済み
- 公式は「大半はドライクリーニング推奨」。家庭洗濯は取り扱い表示に記載がある場合のみ
- ダウンは乾かし方で仕上がりが決まる。平干しし、乾燥中に動かして羽毛を均一に
- 香水・化粧品・手指消毒剤は「落とせない汚れ」になる。保管は圧縮せず吊るして
山で死なないための道具として生まれたものが、街で着られている。手入れの方法も、その成り立ちをたどると納得がいきます。空気を抱えこむ力を守ってやること。それを考えてお手入れしてあげましょう。
出典
- モンクレール公式サイト「アフターケアサービス」(お取り扱いの注意・保管方法)
https://www.moncler.com/ja-jp/client-service/expert-aftercare - モンクレール公式サイト FAQ「商品のアフターケア」内「通常のお手入れ」「アウター」(引用したお手入れの指示はすべてこちら)
https://www.moncler.com/ja-jp/client-service/faq/product-aftercare - DIST – Down Integrity System and Traceability(モンクレール公式)
https://dist.moncler.com/ - ブランドの沿革(創業・社名の由来・遠征への提供・グルノーブル五輪・パニナーロ・2003年の買収)については、上記公式資料に加え、Pen「フランス生まれのプレミアムダウンの先駆者、モンクレールの歴史を振り返る」、Precious「先見の明が進化の源!世界中で愛される『モンクレール』の歴史と今」、および日本語版Wikipedia「モンクレール」を突き合わせて記載しています。
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