ヘルノ(HERNO)ってどんなブランド?「ダウン」で一括りにできない理由

アウター・コート

本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

「ヘルノのダウン、どう洗えばいいですか」

——このご質問には、そのままではお答えできません。

実際に6着の品質表示を並べてみたら、羽毛も、原産国も、洗濯表示も、バラバラでした。同じ棚に並んでいて、同じくらいの値段で、見た目も似ているのに、です。

しかも、そのうち1着だけ「手洗い可」でした。

この記事では、まずヘルノというブランドの成り立ちを見ます。そのうえで、自分の一着のタグをどう読むかを書きます。

ヘルノとはどんなブランド?

1948年、イタリア北部のレーザという町で生まれました。マッジョーレ湖のほとりです。

創業者はジュゼッペ・マレンツィと、妻のアレッサンドラ・ディアーナ。公式サイトには、始まりのことがこう書かれています。

1948年のあのコットン——戦争で放棄された飛行機から採ったヒマシ油で処理されたコットンから、若きジュゼッペ・マレンツィと妻アレッサンドラ・ディアーナは、事業を興す可能性を感じ取ったのです。

ヘルノ公式サイト「History」より(筆者訳)

戦争で放置された飛行機の油です。

戦後まもないイタリアで、手に入るものを使って、水を通さない布を作った。ヘルノの出発点は、ダウンジャケットではなくレインコートでした。

水が、このブランドのミューズです

公式は、水についてこう書いています。川でも湖でも、雨でも霧でも、雪でも湿気でも——それが、すべてが始まり、すべてが続く「最高性能の製品」、つまりレインコートを生んだミューズなのだ、と。

湖畔の町の、雨と霧と湿気。その土地の不便を、商品にしたブランドです。

社名は、会社の下を流れる川の名前です

これは公式に書かれています。「会社の下を流れる川の名を冠したブランド」。

その川の名がエルノ(Erno)。マッジョーレ湖に注ぐ川です。

地名でも、人名でもなく、川。水がミューズだという話と、きれいにつながっています。

1968年、大阪に店がありました

日本の読者にとって、ここは意外だと思います。

公式の沿革にこうあります。「1968年、ヘルノはすでに東方の日本にあり、大阪、そして東京にブティックを構えていた」。アメリカ進出は1980年代初頭ですから、アメリカより日本のほうが先です。

1950年代半ばにはレディースを始め、リバーシブルや手織りカシミヤのコートも作っていました。

一度、表舞台から消えていました

ここがこのブランドのおもしろいところです。

1990年代、ヘルノは自社ブランドを表に出していませんでした。何をしていたかというと、当時台頭してきたフランスとイタリアの有名ブランドの生産を引き受けていたのです。公式サイトは、自社ブランドが「引き出しにしまわれていた」という表現を使っています。

つまり、名前の出ない作り手として、他社の服を縫っていた時期がある。

2005年、現社長のクラウディオ・マレンツィ(創業者の三男・1962年生まれ)が、ヘルノというブランドに再び力を入れる決断をします。有名ブランドの生産を止めて、自社ブランド一本に絞る。公式には、そのときの心境が「一人でやると決めたときの、恐れとアドレナリン」と書かれています。

技術は、他社の服を縫っていた時代に磨かれたものです。そう考えると、いまの仕立ての良さにも説明がつきます。

「ラミナー」は、2025年にヘルノから独立しました

ヘルノにはLaminar(ラミナー)という、ゴアテックスなどを使った高機能のラインがあります。

このラミナーについて、2025年にヘルノから独立したと報じられています(UOMO・2025年11月)。日本では伊勢丹新宿店メンズ館でポップアップが開かれ、問い合わせ先はヘルノ・ジャパンでした。

ヘルノの公式サイトにも、いまもラミナーのページがあります。つまり「まったく無関係の別会社になった」という話ではなく、独立したブランドとして立った、と読むのが近いと思います。

お手入れの観点では、ここは分けて考えてください。

ラミナーはゴアテックスなどの防水透湿素材を使います。これは、ふつうのナイロンのダウンとは扱いが違います。

  • 柔軟剤は使わない(透湿の機能が落ちます)
  • 高温のアイロンを直接当てない
  • 洗うときは防水透湿素材に対応した洗剤を使う

タグに「GORE-TEX」の表示があったら、ふつうのダウンとは別物として扱ってください。

環境への取り組みも、早い

公式の記載から、年が入っているものを拾います。

年内容
2010売上の8%を機械と太陽光設備に投資。レーザ本社と物流拠点はエネルギー自給
2013PEF(製品環境フットプリント)の研究を開始
2016ヨーロッパで初めてPEF認証を取得
2017本社・ショールーム・旗艦店をプラスチックフリーに
2019〜「Herno Globe」ラベルを開始。再生ウール・ナイロン、100%再生のEconyl®ナイロンなど

ブランド基礎データ

項目内容
創業1948年
創業地イタリア・レーザ(マッジョーレ湖畔)
創業者ジュゼッペ・マレンツィ、アレッサンドラ・ディアーナ
社名の由来会社の下を流れるエルノ川(公式に記載)
出発点レインコート(ヒマシ油で処理したコットン)
日本進出1968年、大阪。のちに東京
代表アイテムダウンジャケット、コート、ライトダウン
関連ブランドLaminar(ラミナー)=2025年にヘルノから独立
家庭での洗濯モデルによる。洗濯表示がすべて
お手入れ難易度★★★★☆ 同じブランドでも一着ずつ違います

【クリーニング師が解説】6着の品質表示を並べてみました

国内の正規取扱店に出ているヘルノのウェアから、6着の品質表示を書き写しました。

商品表地詰め物原産国洗濯表示
メランジフェイクファー ダウンブルゾンポリエステル100%ダウン80% フェザー20%ルーマニアクリーニング
ヴァージンウール×ナイロン ブルゾン毛75% ナイロン25%ポリエステル100%イタリアクリーニング
フェイクファーカラー ダウンブルゾンナイロン100%ダウン90% フェザー10%ルーマニアクリーニング
フェイクファーコンビ ダウンブルゾンナイロン100%ダウン90% フェザー10%アルメニアクリーニング
コクーン スタンドカラー ダウンブルゾンナイロン100%+袖と附属は毛100%ダウン90% フェザー10%ルーマニア手洗い可
ULTRA LIGHT フランネルコンビ ダウンポリエステル70% レーヨン15% 毛15%ダウン80% フェザー20%アルメニアクリーニング

3つ、はっきりしたことがあります。

① 原産国が、3か国に分かれていました

ルーマニア、イタリア、アルメニア。

「イタリアのブランド」ですが、全部がイタリア製というわけではありません。これは珍しいことではなく、ヨーロッパのブランドではよくあることです。良し悪しの話ではなく、「イタリア製だから」で判断できないという話です。

② 詰め物が3種類ありました

  • ダウン90% フェザー10%
  • ダウン80% フェザー20%
  • ポリエステル100%(=そもそもダウンではない)

3つめに注意してください。見た目はダウンジャケットでも、中身が化繊のモデルがあります。上の表のウールのブルゾンがそれです。洗い方も、乾き方も、ダウンとは別物です。

③ そして、洗濯表示が割れていました

6着のうち5着が「クリーニング」。1着だけ「手洗い可」。

「ヘルノのダウンの洗い方」という一つの答えはありません。

同じブランド、同じ価格帯、似た見た目。それでも洗濯表示が違います。

ネットで「ヘルノは洗える/洗えない」という説明を見かけても、それが自分の一着に当てはまる保証はありません。まずタグを見てください。

タグの、どこを見ればいいか

① 詰め物は何か

「ダウン◯% フェザー◯%」なのか、「ポリエステル100%」なのか。ここで乾かし方が変わります。

② 洗濯表示の桶のマーク

  • 桶に手のマーク …… 手洗いができます
  • 桶に× …… 水では洗えません。ここで家庭洗いは終わりです

③ いちばん大事:別素材の切り替えがあるか

上の表の「手洗い可」の1着、よく見てください。袖と附属部分が毛100%です。

本体はナイロン、袖はウール。この組み合わせを家庭で洗濯機で回してしまうと、ウールの部分だけ縮みが出るかもしれません。手洗い可の表示なので、手洗いすれば縮みは最小限かもしれませんが、異素材の組み合わせのものは、洗うのが比較的難しいものです。私としては、シーズンオフにクリーニングに出すことをおすすめします。

タグの組成表示に「◯◯部分:」という但し書きが並んでいたら、そこはくせものだと思ってください。そこだけ異素材を使っているものも多い印象です。

「手洗い可」でも、すぐには洗わないでください

先ほども書きましたが、表示があるなら洗っていいとは限りません。現場の感覚をお伝えします。

ダウンの家庭洗いは、洗うより乾かすほうが難しいです。

中の羽毛は、乾ききるまでに丸一日以上かかります。生乾きのまま放置すると、においが出ます。そして羽毛が片側に寄って固まると、元の膨らみには戻りません。

判断の目安を書いておきます。

  • やってみてよい …… 薄手のライトダウンで、表地がナイロン単一、切り替えがなく、「手洗い可」の表示があるもの
  • 出したほうがよい …… 別素材の切り替えがある、厚手、ファー付き、表地にウールやレーヨンが入っている、そして「クリーニング」表示のもの

迷ったら出す。16万円のダウンで練習する必要はありません。

撥水加工について

ヘルノの商品名には「はっ水ナイロン」という言葉がよく出てきます。撥水を前面に出しているブランドです。

ただし、撥水は永久ではありません。着ているうちに、洗ううちに、少しずつ落ちます。

では落ちたらどうするか。ヘルノの公式サイトに、お手入れや撥水回復についての案内は見当たりませんでした。ですので、ここは断定を避けます。

市販の防水スプレーについても、公式が推奨とも非推奨とも書いていない以上、この記事では「使ってよい」とは書きません。

現実的には、クリーニング店に「撥水加工はできますか」と相談するのがいちばん安全です。撥水加工を仕上げの工程で入れられる店なら、生地に合った方法を選んでくれます。

「フェイクファー」はポリエステルです

上の表に、フェイクファーの付いたモデルが3つ出てきました。素材表示を見ると、いずれもポリエステル100%です。

毛皮ではありません。名前に引きずられて、毛皮用の手入れをしないでください。

フェイクファーは、摩擦と熱に弱い素材です。毛が寝てしまったら、乾いた状態で、目の粗いブラシやコームで毛並みに沿ってやさしく起こす。ドライヤーの熱風は当てないでください。縮れます。

取り外せる作りなら、保管のときは外して別に。押しつぶしたままにしないことです。

お手入れに使う道具

洋服ブラシ(馬毛)

洋服ブラシ(馬毛)

着るたびに肩と袖を上から下へ。ダウンは静電気でほこりを寄せます。洗う回数そのものを減らせるのが、いちばんの効きめです。

ダウン専用の洗剤

ダウン専用の洗剤

タグに「手洗い可」の表示があり、切り替えのない一着に限って使います。

ゴアテックス用の洗剤

ゴアテックス用の洗剤

ラミナーなど、ゴアテックスを使った一着に。普通の洗剤や柔軟剤の成分が生地に残ると、撥水が落ちやすくなります。すすぎ残りの少ない専用の洗剤を選んでください(例:グランジャーズ「パフォーマンスウォッシュ」)。

肩幅のあるハンガー

肩幅のあるハンガー

保管は吊るして。ダウンは押しつぶされた状態が続くと膨らみが戻りにくくなります。針金の細いものは肩が落ちます。

公式の窓口

お手入れの専用ページは、確認した範囲では見当たりませんでした。判断に迷う一着は、購入店に現物を見せるのが確実です。

まとめ

  • ヘルノは1948年、イタリア・レーザ(マッジョーレ湖畔)で創業
  • 始まりは戦争で放置された飛行機のヒマシ油で処理したコットン。最初の商品はレインコート
  • 社名は会社の下を流れるエルノ川から(公式に記載)
  • 1968年には大阪に店がありました。アメリカ進出より早い
  • 1990年代は自社ブランドを休み、有名ブランドの生産を請け負っていました。2005年に自社ブランドへ回帰
  • 環境への取り組みは早く、2016年にヨーロッパ初のPEF認証
  • 6着の品質表示を並べたら、中綿も原産国も洗濯表示もバラバラでした
  • 原産国はルーマニア・イタリア・アルメニアの3か国
  • 詰め物はダウン90:10/80:20/ポリエステル100%の3種類
  • 5着が「クリーニング」、1着だけ「手洗い可」
  • タグで見るのは①中綿 ②桶のマーク ③別素材の切り替えがあるか
  • 「手洗い可」でも、切り替えがあるなら出したほうが安全です
  • 公式にお手入れの案内はないので、撥水回復はクリーニング店に相談を
  • 「フェイクファー」はポリエステル。毛皮用の手入れはしない
  • 高機能ラインのラミナーは2025年に独立。ゴアテックスは柔軟剤NGなど、ダウンとは扱いが別

ヘルノを見る

国内の正規取扱いで見る

国内正規取扱いの新品です。在庫と価格はよく変わるので、購入前に各ページの表記をご確認ください。

ELLE SHOP|ヘルノ

雑誌『エル』のファッション通販です。ダウンブルゾン、コート、ジレなどが並びます。

この店を挙げる理由は、商品ページに「お手入れについて」の欄があって、素材・原産国・洗濯表示が買う前に読めるからです。この記事で並べた6着の表も、そこから書き写しました。ヘルノは一着ごとに表示が違うブランドなので、買う前に確認できるかどうかは大きいと思います。

リンク先はELLE SHOPのトップページです。サイト内の検索で「ヘルノ」と入れると、ダウンやコートの一覧が出てきます。

同じ「雨に強い服」でも、成り立ちがまったく違うブランドがあります。

→ バーバリーってどんなブランド?ギャバジンとトレンチコートのお手入れも解説

→ MONCLER(モンクレール)ってどんなブランド?ダウンのお手入れ方法も解説


ソワのアイコン。本を開いて鉛筆を持つフレンチブルドッグのイラスト

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。

業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。

店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。

▶ 運営者プロフィール|ソワのブランド勉強帖について

コメント

タイトルとURLをコピーしました