本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
バーバリーのトレンチコートに、コーヒーをこぼしてしまった。雨の日に泥がはねた。久しぶりに出したら、襟が黄ばんでいた。
淡いベージュのコートは、小さなシミほど目立ちます。 そして、慌ててこすったせいで、かえって広げてしまうことも多いのです。
この記事では、まず2026年のバーバリーがトレンチコートをどう位置づけているかを、公式とWWDJAPANなどの報道から整理します。そのうえで、
- シミが付いたその場でやること・やってはいけないこと
- 公式のアフターケア「トレンチ リフレッシュ」
- 汚れがひどすぎるとき、染め直しはできるのか
を、クリーニング師の目線で順に書いていきます。
2026年、バーバリーはトレンチの年でした
バーバリーは今年(2026年)、創業170年を迎えました。その記念の主役に選ばれたのが、トレンチコートです。
3月:「The Trench, Portraits of an Icon」
2026年3月、バーバリーは170周年のグローバルキャンペーン「The Trench, Portraits of an Icon」を発表しました。FASHIONSNAPの報道によれば、映画・音楽・スポーツ・ファッションの分野から23人が参加し、日本からは宇多田ヒカルさんが登場しています。
宇多田さんは、バーバリーを「英国のアティチュード、職人たち、そしてしなやかな逞しさのシンボル」と表現しています(FASHIONSNAP、2026年3月3日)。
9月:170人が、アウターを着る
9月28日には、もう一つの記念キャンペーン「170: THE ANNIVERSARY PORTRAITS」が発表されました。WWDJAPANによると、ロンドン・ニューヨーク・ソウル・上海の4都市から170人が参加し、ブランドを代表するアウターウエア10型を、それぞれのスタイルで着ています。着想元は、2009年の「Art of the Trench」というプロジェクトだそうです(WWDJAPAN、2026年9月30日)。
同じ9月、ロンドンで発表された2027年春夏コレクション(来年の春夏に向けた新作)では、会場に集まったゲストの装いもトレンチコートが中心だったと報じられています。撥水性のあるギャバジンの定番型から、デニムやレザーのものまで、形はさまざまでした(WWDJAPAN、2026年9月30日)。
ロンドンの美術館で、トレンチの展示
ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)では、トレンチコートだけを扱った展示「The Burberry Trench: Crafting an Icon」が開かれています。V&Aの公式ページによれば、入場無料・予約不要、2027年1月3日まで。実用の外套・軍服から始まり、世界的なファッションの象徴になるまでの歴史をたどる内容です。
経営の立て直しでも、トレンチが軸
WWDJAPANのインタビューで、CEOのジョシュア・シュルマン氏は、2024年11月に打ち出した中長期計画「バーバリー・フォワード」のテーマを「時代を超える英国的ラグジュアリー」と説明しています。そして、
「トレンチコートは、単なる定番品ではなく、自己表現のためのアイテムへと進化している」
WWDJAPAN、2026年3月31日
と語っています。丈を短くしたり、軽い素材にしたり、いまの暮らしと気候に合わせて更新していく、という考え方です。
つまり、トレンチは「昔からある定番」ではなく、いまのバーバリーがいちばん力を入れている服です。長く着る前提で作られている服だからこそ、シミ一つで手放すのはもったいない。ここからは、その「長く着る」ための話です。
▶ トレンチの部品(エポレット・ガンフラップ・Dリング)の意味や、襟が8つのパーツでできている話は、こちらにまとめています → 「トレンチコートの部品の意味」
トレンチのシミが厄介な理由
生地は綿。水を吸います
バーバリーのトレンチの生地は、綿のギャバジンです。1879年にトーマス・バーバリーが考え出した生地で、糸を高い密度で織ることで雨を通しにくくしています。
ただし、素材そのものは綿です。綿は本来、水をよく吸う繊維です。雨をはじいているのは、織りの細かさと、表面に施された撥水加工のおかげです。
撥水は、汚れよけにもなっています
撥水加工が効いているあいだは、こぼした飲み物も玉になって表面に乗ります。すぐに吸い取れば、ほとんど跡が残りません。
ところが、撥水加工は着るうちに少しずつ落ちていきます。撥水が弱った生地は、こぼしたものをそのまま吸い込みます。 「前は平気だったのに、今年は染みる」というのは、たいていこれが理由です。
淡い色ほど「輪ジミ」が目立ちます
もう一つ厄介なのが輪ジミです。
水分を含んだ汚れが生地に広がると、乾くときに汚れがふちへ集まって、輪のような跡が残ります。シミそのものより、この輪のほうが目立つことがよくあります。
家庭で水を使ってシミを叩くと、この輪ジミを自分で作ってしまうことがあります。 淡いベージュのトレンチでは、とくに気をつけたいところです。やるとするなら、水に濡らして固く絞ったタオルで軽くふくことくらいです。決して擦らないでください。
【クリーニング師が解説】シミが付いたら、その場でやること
まずは、これだけ
① 固まりがあれば、取る。
食べこぼしの固形物は、スプーンの背やカードの端で、こすらずにすくい取ります。
② 乾いた布で、押さえて吸う。
白いハンカチやティッシュを当てて、上から押さえて吸わせます。何度か面を替えて、移らなくなるまで。
③ そのまま、早めに専門店へ。
家庭でできるのは、ほぼここまでです。「何を、いつこぼしたか」を覚えておいて、店に伝えてください。
撥水がしっかり効いていれば、②で済むことも多いです。
シミの種類ごとの目安
| 付いたもの | その場でやること | 自分でやらないほうがいいこと |
|---|---|---|
| コーヒー・お茶・ジュース | 乾いた布で押さえて吸う | 水やおしぼりで広くこする(輪ジミになる) |
| 醤油・ソース・ドレッシング | 固形物を取り、押さえて吸う | 水で叩く(油分は水では落ちず、広がるだけ) |
| ファンデーション・口紅 | 触らずに、そのまま店へ | ティッシュでこする(繊維の奥へ押し込む) |
| 泥はね | 乾かしてからブラシで払う | 濡れたままこする |
| ボールペン・インク | 触らずに、そのまま店へ | アルコールや除光液を使う |
| 雨ジミ(輪の跡) | 全体を風通しのいい日陰で乾かす | ドライヤーで一部だけ急に乾かす |
泥はねは例外で、乾くのを待ったほうが落ちます。 濡れているうちにこすると、泥の細かい粒が織り目に入り込んでしまいます。完全に乾いてから、洋服ブラシで上から下へ払ってください。
やってはいけないこと
① こすらない。
ギャバジンは表面の細かい織りが持ち味です。こすると、その部分だけ白っぽく毛羽立ち、撥水加工も落ちます。シミが取れても、こすった跡が残ります。
② 熱を当てない。
アイロンやドライヤーの熱は、シミを生地に定着させてしまうことがあります。シミが付いたまま、アイロンでシワを伸ばさないでください。
③ 漂白剤・ベンジン・除光液を使わない。
色が抜けたり、生地の内側に貼られた芯地や、ボタンを傷めたりするおそれがあります。
④ 市販のシミ抜きペンを、いきなり使わない。
使うなら必ず、裾の内側など目立たない場所で試してから。色落ちや輪ジミの心配があります。正直なところ、高価なトレンチで試す道具ではないと思います。
⑤ 「とりあえず洗濯機」はしない。
トレンチには芯地が使われていることがあります。水と摩擦で浮くと、元に戻りません。
時間が経ってから出てくるシミもあります
着ているときは何も見えなかったのに、しまっておいたら襟と袖口が黄ばんでいた。これは、汗や皮脂が時間をかけて変化したものです。
シーズンの終わりに、見た目がきれいでも一度クリーニングに出す。これが、黄ばみを防ぐいちばん確実な方法です。
クリーニングに出すときは、次のことを伝えると仕上がりが変わります。
- 何が付いたか(分かる範囲で)
- いつ付いたか
- 自分で何かしたか(水で叩いた、こすった、など)
③は言いにくいかもしれませんが、いちばん大事な情報です。何をしたかが分かれば、店はそれに合わせて手を打てます。あなたがさわったことで、シミが落ちにくくなったり、残ったりする確率も高くなります。しかし、自分で何を使ったかなどを教えてもらえると、取れる確率もあがりますので、恥ずかしがらずに教えてくださいね。
公式の「トレンチ リフレッシュ」
バーバリーには、日本語の公式サイトにアフターケアのページがあります。トレンチに関係するのは、主に次の3つです。
| サービス | 公式の説明(要約) |
|---|---|
| トレンチ リフレッシュ | プロの手によるリフレッシュと、撥水性を維持するためのリプルーフィング(撥水の再加工) |
| リプルーフィング | トレンチコートのクリーニングと、撥水トリートメント |
| 補修(アパレル&レインウェア) | ふだんの使用による傷みの補修 |
このほか、裾上げや袖丈の調整などのお直しもあります。
利用するときの条件
公式ページに書かれている条件を、そのまま並べます。
- 一部の店舗での取り扱い
- 有料。費用は、店舗でアイテムを査定したあとに分かる
- 購入証明が必要(バーバリー、または正規販売代理店で買ったもの)
- 対象になるかどうかは、店舗のスタッフが判断する
- 準備ができた連絡から6か月以内に引き取る
- そして、公式自身がはっきり書いています。「すべての汚れを落とせるとは限りません。」
購入証明が要るので、レシートや購入履歴は捨てずに取っておいてください。中古で手に入れたものや、譲り受けたものは、対象にならない可能性があります。
シミを落とすだけでなく、撥水を入れ直してくれる。ここが、公式のサービスのいちばんの強みです。
対応している店舗は限られているので、持ち込む前にカスタマーサービスで「近くでトレンチ リフレッシュを受け付けている店舗」を確認しておくと安心です。
汚れがひどすぎるとき、染め直しはできる?
ここからが、いちばん聞かれる質問かもしれません。
「シミが取れない。いっそ黒く染めてしまえば、また着られるのでは?」
結論から言うと、染めること自体はできる場合があります。ただし、「シミを隠すため」に染めると、期待どおりにならないことが多いと思います。
理由を、実際の染め替えサービスの注意書きから見ていきます。
黒染め専門サービスの注意書きを読んでみる
衣類の染め替えサービスの一例として、京都の黒染め専門の会社が運営する「KUROZOME REWEAR」があります。公式サイトに素材ごとの注意事項が丁寧に書かれているので、トレンチに当てはめて読んでみます(2026年10月確認)。
- 綿・麻は染色可能。 化学繊維が50%以上の衣類は受け付けていない
- 撥水・オイルドなどの加工がある衣類は、きれいに仕上がらない、黒く染まらない場合がある
- 縫い糸はポリエステルが多く、その部分は元の色のまま残る
- 汚れや油が付いている部分は、そこだけ染まらず色ムラになることがある
- スレや色あせがある部分は、黒が薄くなったり、染まりきらなかったりする
- 高温で処理するため、縮みや傷みが出ることがある。 ドライマークの衣類は縮むおそれがある
- ボタンは付けたままだと変色・ひび割れのおそれがあり、外して付け直すオプションがある
- 部分染めはできない
バーバリーのトレンチに当てはめると
ここからは、上の注意書きをもとにした私の見立てです。染め替えの会社が「バーバリーのトレンチはこうなる」と言っているわけではありません。
① 本体の綿は、条件に合う可能性があります。
生地は綿のギャバジンなので、「綿は染色可能」には当てはまります。
② ただし、撥水加工がネックです。
トレンチは、撥水があってこそのコートです。その撥水加工が、染まりにくさ・ムラの原因として名指しされています。
③ ステッチが元の色で残る可能性があります。
トレンチは、襟・肩・ベルト・袖まわりと、ステッチがとても多い服です。縫い糸が染まらずに残ると、黒い生地にベージュの線が走る見た目になります。それを「味」と思えるかどうかです。
④ いちばん大事なこと:シミの部分だけ、染まらないかもしれません。
「汚れや油が付いている部分は、そこだけ染まらず色ムラになるか、同じ用に色が乗るので、シミ部分は周りよりも濃くなることがある」。隠したかったシミが、染めたあとも別の形で残る,ということです。
⑤ 裏地も一緒に染料に入ります。
部分染めはできないので、裏地のチェックも含めてコート丸ごと染めることになります。どう染まるかは、裏地の素材によります。
⑥ 芯地とサイズ。
高温の処理なので、縮みや、芯地の浮きのリスクはゼロではありません。
それでも染めるなら、この順番で
1. まず、シミを落とす。
染める前に、染み抜きの得意な専門店で、落とせるところまで落としておく。汚れが少ないほど、染めムラも少なくなります。
2. 公式に相談する。
トレンチ リフレッシュで落ちるなら、それがいちばん元の姿に近い仕上がりです。
3. それでもダメなら、染める。
染め替えの会社に、品質表示タグの写真を送って事前に相談してください。KUROZOME REWEARの料金は、綿のロングコートで10,780円、ハーフコートで8,360円(税込・送料別)でした(2026年10月確認)。
私の見解としては、染めは過度な期待はせずにムラになれば、それも味として着用するくらいの気持ちで出してみるならアリだと思います。また、クリーニング店の中には、色掛けという技術を持っている人もいます。全体は難しいかも知れませんが、一度相談してみるのもいいかもしれません。
4. 染めたあとは、撥水を補う。
染めの工程で撥水は落ちると考えておいたほうが安全です。防水スプレーで補ってください。
- 染めたら、元の色には戻せません。 染め替えは、基本的に元の色より濃い色にしかできません
- 染めたあとのコートを、公式のアフターケアで受け付けてもらえるかは確認できませんでした。 気になる方は、染める前に問い合わせてください
- 革の部品が付いたモデルは、その部分の扱いを必ず先に相談してください
染め直しは「シミを消す方法」ではなく、「もう一度着るための、最後の選択肢」。そう考えておくと、後悔が少ないと思います。またBURBERRYのトレンチコートが対象になっているかは、お店に確認してください。
ふだんの手入れで、シミは減らせます
最後に、シミを作らないための話を少しだけ。
- 着たあとにブラシ。 ほこりや泥は、繊維に食い込む前なら払うだけで落ちます
- 雨の季節の前に、防水スプレー。 撥水は汚れよけでもあります。全体に均一に、少し離して。必ず目立たない場所で試してから
- 濡れたら、その日のうちに乾かす。 乾いたタオルで水気を押さえて、風通しのいい日陰で。ハンガーは肩幅のあるものを
- シーズンの終わりに、一度クリーニング。 見えない皮脂が、来年の黄ばみになります
▶ ギャバジンという生地のことと、日常のお手入れ・保管の詳しいところはこちら → 「バーバリーってどんなブランド?ギャバジンとトレンチコートのお手入れも解説」
お手入れに役立つアイテム
この記事で出てきた道具は2つです。
まとめ
- 2026年はバーバリー創業170年。記念キャンペーンもV&Aの展示も、主役はトレンチコートでした
- CEOは「トレンチコートは、単なる定番品ではなく、自己表現のためのアイテムへと進化している」と語っています(WWDJAPAN)
- トレンチの生地は綿のギャバジン。撥水が効いているうちは汚れが表面で止まりますが、撥水が弱るとシミを吸い込みます
- シミが付いたら、固まりを取る → 乾いた布で押さえて吸う → 早めに専門店へ。家庭でできるのはここまで
- こすらない・熱を当てない・漂白剤やベンジンを使わない。 泥はねだけは、乾いてからブラシで
- 公式に「トレンチ リフレッシュ」(クリーニング+撥水の再加工)があります。購入証明が必要で、公式も「すべての汚れを落とせるとは限りません」と書いています
- 染め直しは、できる場合がある。 ただし撥水加工・ステッチ・汚れの部分は染まらずに残ることがあるので、「シミを隠す方法」としては期待しすぎないこと
- 染めるなら、シミを落とす → 公式に相談 → それでもダメなら染める → 撥水を補うの順番で
170年前、トレンチは雨と泥の中で着るために作られました。汚れること自体は、この服の宿命です。慌ててこすらず、まず押さえて吸う。それだけで、この先の何年かが変わってきます。

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


コメント