マックスマーラの3大コートを比べる|101801・マニュエラ・テディベアの違い

アウター・コート

マックスマーラの公式サイトには、「アイコン」という専用のページがあります。そこに並ぶコートのうち、とくに名前をよく聞くのがこの3つです。

101801(イチマルイチハチマルイチ)、マニュエラ、テディベア。

どれも「マックスマーラの代表作」と紹介されます。公式の素材表示を並べてみると、この3つ、中身がまったく違います。

  • 片方はウールとカシミヤ
  • 片方はキャメル100%
  • 片方はキャメルとシルク

素材が違えば、着心地も、扱い方も変わります。この記事では、公式サイトに書かれていることだけを並べて、3つの違いを整理します。


まず、3つを並べます

公式の商品ページから、そのまま書き写しました。いずれも「アイコン」ページに載っている代表の型です。

101801[マダム]マニュエラ[ピュアキャメル]テディベア[テディ]
価格¥707,300¥522,500¥654,500
表地ウール90%、カシミヤ10%キャメル100%キャメル88%、シルク12%
裏地キュプラ98%、ポリエステル1%、レーヨン1%レーヨン100%レーヨン100%
前の留め方ダブルブレスト、ボタン留め、共布ベルト付きダブルブレスト、ベルトで留めるラップオーバーダブルブレストのボタン留め
ほかの特徴オリジナルラベル付き、オリジナルのハンガーとコートカバー付きバックスリット入り、ベルト用糸ループ付きブランドロゴ入りのジャカード織り裏地
サイズ展開34〜5034〜50XS・S・M・L
生産国イタリア製イタリア製イタリア製
お手入れクリーニング:専門業者にてクリーニング:専門業者にてクリーニング:専門業者にて
公式にある誕生年1981年記載なし2013年

ここまでで、もう3つ見どころがあります。

  • 価格は101801>テディ>マニュエラの順。キャメル100%のマニュエラがいちばん手に取りやすい
  • サイズ表記が、テディだけ違います。 101801とマニュエラは34〜50の数字、テディはXS〜L。服としての作りの考え方が別だということです
  • 裏地も、101801だけ違います。 キュプラは、レーヨンより湿気を吸って放す性質があります

① 101801(1981年)——「形」で着るコート

公式の紹介文です。

1981年、アンヌ=マリー・ベレッタの手によって生まれた101801コート。瞬く間にアイコンとして君臨したこのコートは、時代を超え、国境を越え、今や世界中の女性たちのワードローブに欠かせない「永遠の定番」となっています。

マックスマーラ公式サイト「101801 アイコンコート」より

商品ページには、さらに具体的なことが書かれています。

上質なヴァージンウールとカシミヤを混合したビーバー仕上げの生地は、とても保温性が高く、ボリューム感があるにもかかわらず軽くソフトな着心地です。タイムレスに愛されているデザインの理由は、どのような身長の方にも完璧なプロポーションでお召しいただけるように計算されたボタンとポケットの位置。

マックスマーラ公式サイト 商品ページより

「計算されたボタンとポケットの位置」。 ここが101801の正体だと思います。素材の珍しさではなく、寸法で成立しているコートです。40年以上ほぼ形が変わらないのは、そのためでしょう。

「ビーバー仕上げ」とは

生地の表面を起毛させて、短い毛足を一方向に寝かせた仕上げのことです。ビーバーの毛皮のような手触りになることから、こう呼ばれます。

つまり、この生地には「毛並み」があります。 あとでお手入れの話に出てきます。

マックスマーラ 101801 アイコンコートのイメージ(ダブルブレストのキャメル色コート)

② マニュエラ ——「羽織って締める」コート

公式の紹介文です。

ゆったりとしたシェイプで包み込むようなラップコートは究極にシンプル。さっと羽織って付属の共布ベルトでウエストマークすれば、全ての女性の美しさを高めてくれるシルエットの完成です。最高級の生地、プロポーション、仕立ての完璧なバランスが、マニュエラが永遠のアイコンコートとして女性たちを魅了し続ける所以です。

マックスマーラ公式サイト「マニュエラ アイコンコート」より

商品ページの記述も見てみます。

MAX MARAのアイコン素材、ピュアキャメルのベルト付きラップコート。伝統的な技術を駆使して畝うねのある外観に仕上げた生地は、美しい上品な光沢があり(中略)ジャケットの上からも羽織れる袖や、トレンドに左右されないテーラードカラーはどんなシーンにも対応。特別なミシンによるMAX MARAステッチでトリミングされた(後略)

マックスマーラ公式サイト 商品ページより

3つのうち、唯一の「キャメル100%」です。

そして構造がはっきり違います。ボタンで留めるのではなく、打ち合わせて、ベルトで締める(ラップオーバー)。公式のスタイル表記には「襟と内側にボタンがついたベルトで留めるラップオーバー」とあります。

「ジャケットの上からも羽織れる袖」という記述も、この型ならではです。上に重ねて着ることを前提にした袖付けだということです。

誕生年は、公式に書かれていません

101801は「1981年」、テディベアは「2013年」と、公式が年を明記しています。ところがマニュエラのページには、年の記載がありませんでした。

よく「マックスマーラの3大アイコン」とまとめて紹介されますが、公式が同じ書き方をしているわけではない、ということです。ここは正直に書いておきます。

マックスマーラ マニュエラ コートのイメージ(ベルトで締めるラップコート)

③ テディベア(2013年)——「素材」で着るコート

公式の紹介文です。

2013年秋冬ミラノコレクションのランウェイに初めて登場して以来、その愛らしいファブリックとコクーンシルエットは、シーンを問わず着用できるワードローブの一つとして、様々なシーンを彩ってきました。

マックスマーラ公式サイト「テディベア アイコンコート」より

商品ページには、素材の作り方が書かれています。

MAX MARAのアイコン素材、キャメルをファーのように仕上げたテディベアコート。高品質なキャメルとシルクを使用し、上品で光沢のある短い毛並みに仕上げた生地は、保温性に優れ、ボリュームがあるにもかかわらず軽い着心地が魅力です。体を包み込むダブルブレストのオーバーサイズフィットのコートは、ショルダーラインも低くデザインし(中略)ゆったりとしたエッグラインシルエット

マックスマーラ公式サイト 商品ページより

「キャメルをファーのように仕上げた」。 毛皮ではありません。キャメルとシルクの生地を、毛皮のように起毛させたものです。

そしてサイズがXS・S・M・L。101801やマニュエラの34〜50とは、まったく別の刻み方です。体に合わせて選ぶ服ではなく、大きさで選ぶ服として設計されている、と読めます。

マックスマーラ テディベアコートのイメージ(毛足の長いボア素材のコート)

【クリーニング師が解説】3つは、手入れの勘所が違います

公式のお手入れ表示は3つとも同じ「クリーニング:専門業者にて」です。家庭で洗う話は出てきません。

ただ、毎日の扱いで気をつける点は、3つとも違います。

気をつける点
101801毛並みがあります。 ブラシは必ず毛並みに沿って
マニュエラベルトの締めどころに、折り目と摩擦が集中します
テディベア毛足を潰さない。毛玉取り器を使わない

101801:ブラシは毛並みに沿って

ビーバー仕上げの生地には、短い毛足が一方向に寝ています。

そこへ逆らってブラシをかけると、毛が起きて、そこだけ色が違って見えます。 光の反射が変わるからです。

  • 手のひらで軽くなでて、なめらかに感じる向きが毛並みです。その向きに、一方向だけ。多くのコートは上から下ですが、自分の一着で確かめてから
  • 毛先のやわらかい馬毛のブラシを使う
  • 肩と背中は、バッグやシートベルトでこすれてテカリが出やすい場所。早めに気づいてください

マニュエラ:ベルトを締めたまま吊るさない

ラップコートは、ウエストを締めて形になる服です。裏を返せば、同じ位置に折り目と摩擦が集中します。

保管するときは、ベルトを外してください。

締めたまま半年吊るすと、ウエストに折り筋が残ります。 キャメル100%は毛が細く、一度ついた折り筋が戻りにくい素材です。

ベルトは別にして、ハンガーのバーに掛けるか、たたんでポケットに入れておくのが安全です。

そしてもう一つ。キャメルは、色をつけていないことが多い素材です。 ラクダの毛そのものの色なので、日に当たると、その部分だけ色が抜けて見えることがあります。 窓際に吊るしっぱなしにしないでください。

テディベア:毛玉取り器を使わない

これがいちばん大事です。

テディベアコートに毛玉取り器を使わないでください。

毛玉取り器は、生地の表面から飛び出した毛玉を刈り取る道具です。テディの表面は、飛び出している毛そのものが生地です。 刈れば、そこだけ毛がなくなります。戻りません。

毛が寝てしまったときは、乾いた状態で、毛並みに沿ってやさしくブラシをかけてください。

保管も違います。

  • クローゼットに詰め込まない。 両隣を空ける
  • 長時間座るときは、背中を潰さないように脱ぐ
  • 雨に濡れたら、振って水を落とし、風通しのよい日陰で吊るして乾かす

なお、この生地にはシルクが12%入っています。シルクは摩擦と日光に弱い繊維です。直射日光を避ける理由が、もう一つ増えます。


3つに共通していること

共通点内容
お手入れ3つとも「クリーニング:専門業者にて」
生産3つともイタリア製
ポケット3つともサイドポケット
前身頃3つともダブルブレスト

お店に出すときは、型の名前を伝えるとどのコースにするかおすすめしてくれるかも。

「101801です」「マニュエラです」「テディベアです」と言えば、その扱いを知っているお店は話が早くなります。もしも、私なら最上位クラスのコースをおすすめします。

もちろん、タグの組成表示を見せるのがいちばん確実ですが、それはお店の人の仕事。ウール+カシミヤなのか、キャメル100%なのか、キャメル+シルクなのか。そこで仕上げの方針が変わります。高いクリーニング料金にはなりますが、長く着るためにもきちんとしたコースで出してください。


どれを選ぶか

公式の書きぶりから読み取れることを、整理します。

どういう服か向いている人
101801寸法で成立しているコート。 「計算されたボタンとポケットの位置」と公式が書いています形をきれいに着たい方。1着を長く着る前提で選ぶなら、まずここ
マニュエラ羽織って締めるコート。 ジャケットの上からも着られる袖上に重ねて着る方。通勤でジャケットの上から羽織るなら扱いやすい
テディベア素材で着るコート。 キャメルをファーのように仕上げた生地ボリュームを楽しみたい方。ただし手入れはいちばん気を使います

扱いやすさでいえば、101801とマニュエラが先です。テディは、毛足のある生地だという前提を分かったうえで選んでください。


まとめ

  • 3つとも「アイコンコート」ですが、表地は全部違います
  • 101801=ウール90%・カシミヤ10%(ビーバー仕上げ)、マニュエラ=キャメル100%、テディベア=キャメル88%・シルク12%
  • 価格は101801>テディベア>マニュエラ。いちばん高いのは101801
  • サイズ表記はテディだけXS〜L。ほかの2つは34〜50
  • 裏地も101801だけキュプラ。ほかの2つはレーヨン
  • 公式に年があるのは101801(1981年)とテディベア(2013年)。マニュエラには記載がありません
  • 101801は毛並みに沿ってブラシをかける
  • マニュエラはベルトを外して保管。 締めたままだと折り筋が残ります
  • テディベアに毛玉取り器は使わない
  • お手入れ表示は3つとも「クリーニング:専門業者にて」。お店には型の名前とタグを伝えて

ブランドの成り立ちと、日本にある5つのラベルの違いは、1本目にまとめています。

→ マックスマーラってどんなブランド?「キャメル色」はキャメルではありません

→ バーバリーってどんなブランド?ギャバジンとトレンチコートのお手入れも解説


ソワのアイコン。本を開いて鉛筆を持つフレンチブルドッグのイラスト

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。

業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。

店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。

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