本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。
タトラス(TATRAS)。日本人がイタリアで立ち上げて、ポーランドで作っているダウンです。
この一行だけで、もう少し知りたくなりませんか。イタリアのブランドだと思っていた方も、日本のブランドだと思っていた方も、どちらも半分だけ当たっています。
この記事では、まず公式が自社をどう説明しているかを見ます。そのうえで、公式のお手入れの案内に何が書かれているかを読み解きます。
タトラスの公式には、「特定のクリーニング店のご案内は行っておりません」という一文があります。突き放しているように読めますが、理由があります。そこが、この記事のいちばん伝えたいところです。
タトラスとはどんなブランド?
公式サイトの「About us」には、こう書かれています。
2007年、日本人によりイタリア・ミラノで設立。
創業者の名前は、公式には出てきません。「日本人により」とだけ書かれています。
三つの国が関わっています
タトラスを語るとき、国が三つ出てきます。
日本、イタリア、ポーランド。それぞれの役割が、公式の文章からはっきり読み取れます。
- 日本 ——「日本人の妥協を許さない精緻なものづくり」
- イタリア ——「イタリアの美意識」。設立の地であるミラノ
- ポーランド —— ダウンの調達先。そして、実際の生産国
最後のポーランドについては、後でもう一度詳しく触れます。ここが、タトラスを理解するうえでいちばん大事な部分だからです。
核にあるのは「カルチャー、エレガンス、ミリタリー」
公式は、ブランドの核を「カルチャー、エレガンス、ミリタリーを核とする」と表現しています。
ダウンジャケットはもともと防寒具で、山や軍の装備から来ています。そこを隠さずに、街で着る服として仕立て直す。タトラスの形の説明としては、この三語がいちばん近いと思います。
ダウンの調達について公式が言っていること
タトラスのダウンについて、公式はこう書いています。
TATRASのダウンには、ポーランドをはじめとする世界各地の信頼できるサプライヤーから厳選した、最高品質のグースダウンを使用しています。さらに、責任ある調達と高品質の証である RDS(Responsible Down Standard)認証 を取得し、安心して長く愛用いただける一着をお届けしています。
TATRAS公式サイト「About us」より
RDS(レスポンシブル・ダウン・スタンダード)は、羽毛の調達が動物の扱いの面で適切かどうかを見る、国際的な認証の仕組みです。ダウン製品を選ぶときの手がかりの一つになります。
さらに公式は、ファーにはSaga Fursを採用していること、リサイクルナイロンの活用、そして修理工房を設けていることにも触れています。
直せる前提で作っている。高いものを長く着てもらうブランドとしては、ここは見ておいていい点だと思います。
名前とロゴの由来は、公式には書かれていません
ここは正直に書きます。
「タトラスという名前は、ポーランドとスロバキアの国境にあるタトラ山脈から来ている」という説明を、よく見かけます。左袖のワッペンにある三つの十字についても、いくつかの意味づけが語られています。
ただし、筆者が確認した範囲では、公式サイトにその説明は見当たりませんでした。しかも、三つの十字の意味については、出どころによって説明が食い違っています。
ポーランドとの結びつきが深いブランドですから、山の名前という話は自然に聞こえます。それでも、公式が言っていないことを「由来はこれです」と書くのは避けておきます。
ブランド基礎データ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 設立 | 2007年(公式サイト「About us」の記載) |
| 設立の地 | イタリア・ミラノ |
| 設立者 | 「日本人により」とのみ公式に記載 |
| 関わる三か国 | 日本(ものづくり)/イタリア(美意識)/ポーランド(ダウンと生産) |
| 代表アイテム | ダウンジャケット、ダウンベスト |
| 中わた | ダウン90%・フェザー10%(公式の製品ページより) |
| 表地 | モデルによって大きく違う(ナイロン/綿/ウールなど) |
| 家庭での洗濯 | モデル次第。品質表示がすべて |
| お手入れ難易度 | ★★★★☆ 判断がモデルごとに変わる |
【クリーニング師が解説】中身は同じ、外側は全然違う
ここからが本題です。
タトラスの公式オンラインストアでは、商品ごとに素材と原産国が公開されています。実際に何点か見比べてみました。すると、きれいに分かれました。
同じだったところ
羽毛と原産国です。
| 見たモデル | 羽毛 | 原産国 |
|---|---|---|
| ドミッツィアーノ | ダウン90% フェザー10% | ポーランド |
| チマ | ダウン90% フェザー10% | ポーランド |
| マカーロ | ダウン90% フェザー10% | ポーランド |
| アルヴ | ダウン90% フェザー10% | ポーランド |
| ノコ | ダウン90% フェザー10% | ポーランド |
見た5点すべてがダウン90%・フェザー10%、そして原産国はポーランドでした。
「イタリアのブランド」と思っていると意外かもしれませんが、作っているのはポーランドです。公式が三か国を挙げる理由が、ここではっきりします。
全然違ったところ
表地です。
| 見たモデル | 表地 | 重さの目安 |
|---|---|---|
| ノコ(薄手) | ナイロン100% | 約330g |
| マカーロ | 綿90% ポリエステル10% | 約680g |
| アルヴ | ナイロン100% | 約955g |
| ドミッツィアーノ | 毛95% 絹5% | 約995g |
| チマ | 毛95% 絹5%(ファー付き) | 約1,125g |
ナイロン、綿、そしてウールと絹。重さも330gから1,125gまで、3倍以上の開きがあります。
これは、お手入れの話が根本から変わるということです。
「タトラスのお手入れ方法」という一つの答えはありません。
ナイロンの薄手と、ウールに絹を混ぜた表地では、扱いがまったく違います。ネットで「タトラスは◯◯すればいい」という説明を見かけても、それが自分の一着に当てはまるとは限りません。
まず、自分の一着のタグを見てください。そこに何が書いてあるか。話はそこから始まります。
公式のお手入れの案内を読む
タトラスは、公式サイトのショッピングガイドに「商品・お手入れについて」という項目を設けています。内容がかなり具体的なので、順に見ていきます。
保管について
ご自宅で保管する際は、直射日光を避け、風通しの良い場所に吊るして保管してください。
ほこりや汗、油脂などの汚れは、生地の劣化を引き起こす原因となりますので、シーズンが終わった後にはクリーニングを行い、保管することをおすすめします。
TATRAS公式サイト「ショッピングガイド」より
二つ、押さえておきたいことがあります。
一つめは「吊るして保管」。たたんで押し入れに入れるのではなく、ハンガーにかけて、風の通る場所に。ダウンは押しつぶされた状態が続くと、ふくらみが戻りにくくなります。クリーニング師の視点からも、ダウンを決して圧縮しないほうがいいことをおすすめします。
二つめは「シーズンが終わった後にはクリーニング」。これはブランド自身の言葉です。着た後の汗や皮脂は、目に見えなくても残っています。そのまま半年しまうと、生地が傷む原因になります。ぜひ汚れの酷いものは、追加料金がかかっても、染み抜きなどをお願いしましょう。
防水スプレーは、公式がすすめていません
公式には、はっきりこう書かれています。
「防水スプレーの使用は、生地を傷める可能性があるため、おすすめしておりません。」
ダウンを買うと防水スプレーも一緒に、という流れをよく見ますが、タトラスについては公式が止めています。この記事でも防水スプレーは紹介しません。
では撥水が落ちてきたらどうするか。公式は、ほぼすべてのダウンジャケットに撥水加工を施しているとしたうえで、「あくまでもタウンユース向けのファッションアイテム」であり、着用や経年で効果が下がることがあると説明しています。
つまり、雨の日の主役にする服ではない、ということです。どうしても撥水を回復させたいときは、自分でスプレーをかけるより、クリーニング店に撥水加工ができるか相談するほうが安全だと思います。
羽が出てきたときは、引っ張らない
縫い目から羽が顔を出すことがあります。公式の指示はこうです。
「万が一羽毛が出てきた場合は、引っ張らずに生地を軽くこすり合わせ、内部に押し込んでください。」
引き抜くと、そこに穴が残ります。次の羽が出る道を自分で作ってしまうことになります。
公式によれば、内部はダウンパックとフェザーの3重(商品によっては4重)構造になっていて、多少抜けても暖かさに影響は出ないとのことです。慌てなくて大丈夫、ということですね。
ふくらみが減ったと感じたら
公式は、ボリュームが落ちたときの手順を4段階で示しています。
- 手でダウンをほぐし、中に空気を入れてふくらみを取り戻す
- 天気の良い日に、日陰で4〜5時間干す
- 手で全体を軽く「パンパン」と叩いてから、ハンガーにかける
- 戻らなければ、同じ手順を繰り返す
ポイントは「日陰で」です。直射日光に当てると、表地の色があせたり、生地が弱ったりすることがあります。
「特定のクリーニング店は案内しません」の意味
冒頭で触れた一文に戻ります。公式にはこう書かれています。
※弊社にて特定のクリーニング店のご案内は行っておりません。
日頃よりお客様がご信頼されているクリーニング店へお出しくださいますようお願いいたします。
TATRAS公式サイト「ショッピングガイド」より
はじめて読んだとき、少し驚きました。ブランドによっては提携先を指定するところもあるからです。
ただ、ここまで見てきた内容をふまえると、筋は通っていると思います。
表地がナイロンのモデルと、ウールに絹を混ぜたモデルと、ファーが付いたモデル。これを一つの窓口で同じように扱うのは、そもそも無理があります。だから「信頼しているお店へ」という言い方になる。そう読むと、納得できます。
お店に出すとき、伝えるといいこと
そのうえで、預けるときに伝えると話が早い点をまとめておきます。
- ファーが外せるかどうか。外せるものは外して渡すと、扱いが分かれます
- 撥水加工がされているが、効きが悪くなってきたなど。気になる点。
- 羽が出ている場所。その部分の扱いに注意してもらえます
- 汚れの心当たり。食べこぼしなのか、汗なのか。原因が分かると落とし方が変わります
聞かれる前に言ってしまって構いません。むしろ、そのほうがお店は助かります。
ファーが付いているモデルについて
公式によると、タトラスのファーはSaga Fursのもので、モデルによってはポーランドラクーン(タヌキ)と明記されています。
ファーは、ダウン本体とは扱いがまったく違います。取り外せる作りになっているものが多いので、保管のときは外して、別々に。押しつぶさないこと、湿気を避けることが基本になります。
ここは公式に具体的な手順の記載が見当たりませんでした。判断に迷うようでしたら、購入店かクリーニング店に相談してください。
お手入れに使う道具
ここからは、お手入れに使う道具を紹介します。
防水スプレーは、この記事では紹介しません。公式がすすめていないためです。
LIVRER アウトドア ディタージェント(中性洗剤)
表地のタグに家庭で洗える表示がある場合に限り使います。液性は中性で、ナイロンやポリエステルなど、撥水加工のある表地を想定して作られた洗剤です。薄手のライトダウンには洗える表示のものがあります。ウールや絹を含む表地は対象外です。判断に迷ったら洗わないでください。
現行のモデルは、タトラスの公式オンラインストアで見られます。

TATRAS/ATENE(アテネ)ライトダウンジャケット
タトラスの定番のひとつ、薄手のライトダウンです。公式オンラインストアは、モデルごとの品質表示と取り扱いの案内がそのまま載っています。この記事で書いたとおり、タトラスは表地がモデルごとに違います。買う前でも、持っている一着を確かめたいときでも、まず見ておくと迷いません。
まとめ
- タトラスは2007年、日本人がイタリア・ミラノで設立したブランド
- 日本・イタリア・ポーランドの三か国が関わり、生産はポーランド
- 中わたはダウン90%・フェザー10%で共通。しかし表地はモデルごとに全然違う
- だから「タトラスのお手入れ」という一つの答えはない。まずタグを見る
- 公式はシーズン後のクリーニングをすすめ、防水スプレーはすすめていない
- 保管は直射日光を避け、風通しの良い場所に吊るして
- 羽が出たら引っ張らずに押し込む。ふくらみが減ったら日陰で4〜5時間
- 公式は特定のクリーニング店を案内しない。表地の情報を持って、信頼できるお店へ
ダウンの選び方や扱いについては、同じくダウンで知られるブランドの記事もあわせてどうぞ。
→ MONCLER(モンクレール)ってどんなブランド?ダウンのお手入れ方法も解説
公式の窓口

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


コメント