バーバリーってどんなブランド?ギャバジンとトレンチコートのお手入れも解説

アウター・コート

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肩の小さなベルト、胸元の四角い当て布、ウエストのDリング。トレンチコートには、よく見ると「何のためにあるのか分からない部品」がたくさん付いています。

実は、あれは全部、意味があって付いています。 しかも、おしゃれのためではありません。

バーバリーは2026年に創業170年を迎えました。雨と寒さの多いイギリスで、「天候から人を守る服を」という思いから始まった会社です。この記事では、その成り立ちを見たうえで、ギャバジンという生地の正体と、トレンチコートをどう扱えばいいのかを、クリーニング師の目線で整理します。

バーバリーとはどんなブランド?

バーバリー(BURBERRY)は、1856年にイギリス・ハンプシャー州のベイジングストークで生まれました。

創業者のトーマス・バーバリーは、このときまだ21歳。公式は創業の理念を、「衣服はイギリスの天候から人を守るために設計されるべきである」という考えだったと説明しています。

ファッションの会社ではなく、雨対策の会社として始まった。ここがすべての出発点です。

1898年のバーバリー広告。射撃・釣り・ゴルフ・自転車・乗馬向けの防水装備として宣伝されている
1898年の広告。「自己換気する防水装備」として、射撃・釣り・ゴルフ・自転車・乗馬向けに売られていました(出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン)

21歳の青年が作った「雨に負けない布」

1879年、トーマス・バーバリーはギャバジン(gabardine)という生地を発明します。

公式の説明はこうです。軽くて、通気性があり、防水で、破れにくい。 その秘密は、生地の中にある小さな空気のポケットにあり、それが通気を可能にしている、と。

ギャバジン生地の接写。斜めに走る畝(綾織)が見える
ギャバジンの表面。斜めに走る畝(うね)が綾織の証拠です(出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン)

当時の雨具はゴムを引いた重い布が主流でした。蒸れるし、重い。 そこに「雨をはじくのに、蒸れない布」が現れたわけです。1888年には特許を取得しています。

1908年のバーバリー広告。ギャバジン製の釣り用スーツ
1908年の広告。「雨が葉の露のように転がり落ちる」「暑くならず、寒くならない」と、蒸れないことを売りにしています(出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン)

極地探検家たちが、この布に命を預けました

ギャバジンがどれだけ信頼されたかは、ここを見ると分かります。

年出来事
1893年ノルウェーの探検家フリチョフ・ナンセンが、北極圏へバーバリーのギャバジンを持ち込む(記録に残る最初の極地探検)
1911年ロアール・アムンゼン隊が、バーバリーのギャバジンのテントと衣類で人類初の南極点到達
1912年ロバート・スコット隊が南極点に到達。バーバリーの衣類とテントを使用(帰路で遭難)
1914〜1917年アーネスト・シャクルトンが、エンデュアランス号の遠征を含む3回の探検でギャバジンを着用
1919年アルコックとブラウンが、バーバリーの飛行服で初の大西洋無着陸横断飛行

人類が初めて南極点に立ったとき、その人はバーバリーを着ていた。 これは広告の文句ではなく、公式の年表に載っている事実です。

トレンチコートは、戦場から来ました

1912年、トーマス・バーバリーはタイロッケン(Tielocken)というコートの特許を取ります。ベルトとバックルで前を留め、襟にボタンが1つ。これがトレンチコートの前身とされています。

第一次世界大戦(1914〜1918年)で、バーバリーは軍に衣類と装備を納めました。このときの設計が、いまのトレンチコートになっています。

1917年のバーバリー広告。第一次大戦の将校用コート「タイロッケン」
1917年の広告。第一次大戦の将校用コート「タイロッケン」。これがトレンチコートの原型です(出典:Wikimedia Commons/パブリックドメイン)

そして冒頭の「意味の分からない部品」の答えが、公式にはっきり書かれています。

  • エポレット(肩のベルト) … 階級章を示すため。手袋などを挟んでおくこともできた
  • ガンフラップ(胸の当て布) … 追加の保護のため
  • Dリング(ウエストのリング) … 軍の装備を吊るすため
  • ストームシールド(背中の当て布) … 雨を効率よく流すため

そして公式はこう続けます。「これらの特徴は、いまのバーバリーのトレンチコートにも残っている。」

100年前の戦場で必要だった形が、そのまま残っている。飾りに見えるものが、全部もとは道具だったということです。

チェックは、もともと裏地でした

意外に思われるかもしれませんが、あのチェック(バーバリー・チェック)は、表に出る柄ではありませんでした。

1920年代、レインコートの「裏地」として導入されたのが始まりです。

表に出たきっかけは、1967年。パリ店のバイヤーが、英国大使のための展示を準備しているときに思いつきました。コートからチェックの裏地を外して、スーツケースを包み、傘のカバーを作ってみた。 これがチェックのアクセサリーの誕生だと、公式は記しています。

裏地だったものが、ブランドの顔になった。 偶然の思いつきが100年続く意匠になった話です。

そして今

バーバリーは4つのロイヤルワラントを受けてきました。肩書きの変化が面白いので、並べておきます。

  • 1919年|ジョージ5世 … テーラー(仕立て屋)として
  • 1955年|エリザベス女王 … ウェザープルーファー(防水業者)として
  • 1990年|プリンス・オブ・ウェールズ … アウトフィッター(服飾業者)として
  • 2024年|チャールズ国王 … アウトフィッターとして

「防水業者」として王室に認められているブランドは、そう多くありません。

なお、1972年にヨークシャーのキャッスルフォードに工場を取得し、ヘリテージのトレンチコートは、いまもそこで作られています。 2020年には、この工場を医療用防護具の生産に切り替えて、16万点以上をイギリスの医療機関に寄付しました。

社名については、1999年に「Burberrys」から「Burberry」へ変更されています。古いものに「Burberrys」と書いてあるのは、そのためです。

2026年で創業170年を迎えました。

ブランド基礎データ

創業1856年
創業国イギリス(ハンプシャー州ベイジングストーク)
創業者トーマス・バーバリー(当時21歳)
出発点雨具。イギリスの天候から人を守るための衣服
代表アイテムトレンチコート、チェックのマフラー
主な素材コットン・ギャバジン、カシミヤ、ウール
家庭での洗濯✕ ほぼ不可(必ず洗濯表示を確認。トレンチは専門店が基本)
お手入れ難易度★★★★☆ 洗うより、水をはじく力をどう保つかが難しい

ギャバジンという生地

ここを分かっておくと、トレンチコートの扱いが一気にはっきりします。

ギャバジンは、防水の「膜」を貼った生地ではありません。 糸を非常に高い密度で織り上げることで、水を通しにくくした布です。公式が説明する「小さな空気のポケット」というのは、その織りの構造のことです。

だから、こうなります。

  • 蒸れにくい。 膜で塞いでいないので、空気は通ります
  • 丈夫。 密に織ってあるぶん、破れにくい
  • その代わり、完全防水ではありません。 強い雨に長時間当たれば、いずれ濡れます

いちばん大事なこと:水をはじく力は、少しずつ落ちます

ギャバジンの生地には、撥水加工が施されています。そして撥水加工は、消耗品です。

着用の摩擦、汚れの付着、そしてクリーニングの溶剤。これらで少しずつ落ちていきます。

誤解しないでいただきたいのですが、これはバーバリーの品質の問題ではありません。 撥水加工がされたもの全般に共通する性質です。ゴアテックスのレインウェアも、傘も、同じように落ちます。

つまり、トレンチコートの手入れとは「汚れを落とすこと」以上に「はじく力を戻すこと」なのです。

【クリーニング師が解説】お手入れの注意点

やってはいけないこと

① 洗濯機で洗わない。
トレンチコートには、接着で留められた芯地が使われていることがあります。水と摩擦で剥がれると、表からボコボコと浮いて見えます。一度浮いた芯地は、戻らないことが多いです。

② 濡れたまま放置しない。
雨に濡れたら、その日のうちに。乾いたタオルで水気を押さえて、風通しのいい日陰で乾かします。濡れたまま畳んで置くと、シミとカビの原因になります。

③ ベルトをバックルで締めたまま保管しない。
長く締めたままにすると、その位置に折り跡が付きます。保管するときは、ベルトを外すか、緩く結んでおくのが安全です。

④ 直射日光に当てない。
綿は日に焼けます。特に淡いベージュは、変色が目立ちます。

⑤ アイロンを直接当てない。
ギャバジンは表面の織りが命です。高温を直接当てるとテカリが出ます。当て布をするか、スチーマーで浮かせてください。

クリーニングに出すときに、必ず聞いてほしいこと

トレンチコートは、家庭で洗うものではありません。問題は「出すかどうか」ではなく「出したあと」です。

前に書いたとおり、ドライクリーニングの溶剤は撥水の効果を低下させてしまいます。 汚れと一緒に、はじく力も落ちる。

だから、依頼するときはこう聞いてみてください。

「撥水の加工まで、やってもらえますか」

撥水回復の処理ができる業者かどうかで、仕上がりがまったく変わります。ここを確認せずに出すと、きれいにはなったけれど、撥水効果が弱くなったコートが返ってきます。

取り外せるものは、外してから

トレンチコートは、パーツが多い服です。

  • ライナー(裏に付く中綿やウールの内張り) … 外せるものは外して、別に扱います。素材が違えば、扱いも違います
  • ベルト … 外して一緒に出します。忘れると片方だけ色が変わります
  • フード、毛皮の襟 … 付いていれば必ず申告を

日常のお手入れ

ブラシをかける … 着たあと、洋服ブラシで上から下へ。ほこりは繊維に食い込む前なら簡単に落ちます。これが一番効く日常の手入れです。

襟と袖口を見る … 皮脂がたまる場所です。汚れたら固く絞った濡れタオルで軽く汚れを取っておくことをおすすめします。黄ばみとして出てからでは遅いので、シーズン終わりには必ず対処してください。

ハンガーを選ぶ … トレンチは重い服です。針金のハンガーでは肩が落ちます。肩幅のある、厚みのあるハンガーに替えてください。

撥水スプレーをかける … 雨のシーズン前に。全体に均一に、少し離して。必ず目立たない場所で試してからにしてください。

保管

  • シーズン終わりに必ず一度きれいにする。 汗と皮脂は、時間が経ってから黄ばみとして出ます
  • ビニールのカバーを外す。 クリーニングから戻ったときの袋は、そのままにしないでください。湿気がこもります
  • 不織布のカバーに替える。 通気性があるものを
  • 肩幅のあるハンガーで、ゆとりをもって吊るす

お手入れに役立つアイテム

家庭でやれるお手入れは、この4つの道具で足ります。どれも「高いものを買う」より「種類を間違えない」ほうが大事です。

① 洋服ブラシ(豚毛)

トレンチのギャバジンは、糸を詰めて織った平らで硬めの生地です。ここに使うなら、コシのある豚毛。やわらかい馬毛はカシミヤなどデリケートな素材向けで、トレンチのほこりを掻き出す力は弱めです。
選ぶときは、毛足が短すぎないもの・持ち手が握りやすいもの。着たあと、襟から裾へ上から下に数回で十分です。

② 撥水スプレー(フッ素系)

ここは種類を間違えると逆効果になる道具です。ギャバジンは「水をはじきながら空気は通す」布なので、生地の表面を膜でふさいでしまうシリコン系は向きません。繊維の一本一本をコーティングするフッ素系を選んでください。
使うときは30cmほど離して全体に均一に。必ず裾の裏など目立たない場所で試してからにしてください。

③ 不織布カバー

クリーニングから戻ってきたビニール袋は、必ず外してください。あれは持ち帰り用で、保管用ではありません。湿気がこもってカビや変色の原因になります。
入れ替えるなら通気性のある不織布カバー。トレンチは丈が長いので、着丈が隠れる長め(120cm前後)を選ぶと裾が出ません。中が見える窓付きだと探しやすいです。

④ 幅広ハンガー

トレンチは重い服です。針金や細いハンガーに掛けると、肩に跡が付き、時間が経つと戻らなくなります。
目安は肩幅42〜45cm・肩の厚み4cm以上で、肩先がなだらかにカーブしているもの。木製だと重さに負けません。クローゼットではぎゅうぎゅうに詰めず、指2本分のすきまをあけて掛けてください。

自分でできない・自信がない方へ

バーバリーには公式のサービスがあります

まずはブランド公式の窓口に相談するのが確実です。ボタンや金具のような純正パーツが必要な修理は、公式のほうが確実です。

▶ バーバリー公式カスタマーサービス(お問い合わせ)

日本語で相談できます。ライブチャット・電話・Eメールの窓口があり、電話は平日9時〜19時、土日祝は10時〜19時(日本時間)です。同じページから最寄りの店舗を探すこともできます。持ち込みで相談したい場合は、まず店舗を調べてから行くのが確実です。

クリーニング店を選ぶとき

繰り返しになりますが、確認すべきは「撥水加工まで対応できるか」です。

「トレンチを扱えますか」ではなく、「撥水の加工まで含めて、いくらですか」と聞いてください。この一言で、その店がトレンチを分かっているかどうかが分かります。

袖口のすり切れ、裏地の破れは、クリーニングではなく修理の領域です。リフォーム店や、革・衣類の修理を専門にしている業者を探してください。

まとめ

  • バーバリーは1856年創業。当時21歳のトーマス・バーバリーが、「イギリスの天候から人を守る」ために始めた会社です。2026年で170年
  • 1879年にギャバジンを発明。膜を貼るのではなく、高密度に織ることで雨をはじく生地です
  • 人類初の南極点到達(1911年・アムンゼン隊)は、バーバリーのギャバジンとともにでした。ナンセン、スコット、シャクルトンも使っています
  • トレンチコートの部品は、全部が軍装備の名残。 エポレットは階級章、Dリングは装備を吊るすため、ガンフラップは保護、ストームシールドは雨を流すため
  • チェックは、もともとレインコートの裏地。 1967年にパリ店のバイヤーが外に出して、アクセサリーになりました
  • ロイヤルワラントは4つ。1955年にエリザベス女王から受けたのは「防水業者」としてでした
  • 手入れの要は、汚れを落とすことより「はじく力を戻すこと」。 撥水加工は消耗品で、溶剤で落ちます
  • クリーニングに出すときは、「撥水の加工までやってもらえますか」と必ず聞いてください

170年前、21歳の青年が「雨に濡れない服を作る」と決めたところから始まりました。手元の一着に付いている部品は、その延長線上にあります。 意味が分かると、扱い方も変わってくるはずです。


この記事を書いた人

ソワのアイコン。本を開いて鉛筆を持つフレンチブルドッグのイラスト

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。

業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。

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