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ロエベ(LOEWE)。まず、名前の意味からして知られていないブランドかもしれません。はじめて英語表記を見たときは、「ロエウェ?」なんて読むのかななんて思いました。
スペインのブランドなのに、名前はスペイン語らしくない。そう思った方は鋭くて、これはドイツ語で「ライオン」という意味です。
2026年、ロエベは創立180年を迎えました。この記事では、その成り立ちを見たうえで、公式のケアガイドに何が書かれているかを読み解きます。
ロエベは、日本語で、かなり具体的なお手入れの指示を公開しています。 そこを起点にすれば、迷うことがかなり減ります。
ロエベとはどんなブランド?
ロエベは1846年、スペイン・マドリードで生まれました。公式は自社を「世界で2番目に歴史あるラグジュアリーファッションブランド」と説明しています。
始まりは、一人の創業者ではなく、職人の集団でした。
マドリード中心部の賑やかなロボ通りに、スペインの職人たちが集まって小さなレザー工房を開きます。当初そこで作っていたのは、財布、ウォレット、シガレットケース、ジュエリーケース、写真立てといった革小物でした。
名前は「ライオン」という意味です
マドリードに移住してきたドイツの商人、エンリケ・ロエベ・ロスバーグが、この工房に出会います。
公式によれば、彼は職人たちの技術と、素材や製品の質の高さに感銘を受け、その工房を買い取りました。そして、自らの姓「LOEWE」を屋号に掲げます。
ドイツ語で「ライオン」。 スペインの職人集団に、ドイツ人の名前が付いた。ロエベという名前は、その出会いの記録です。
1905年、スペイン王室に認められます
1892年には、当時のマドリードで最もファッショナブルな通りの一つ、プリンシペ通りに店舗併設型の工房を構えます。「上質な革製品の工房」と称され、このころから女性用ハンドバッグのデザインも始まりました。
そして1905年。2代目のエンリケ・ロエベ・ヒントンが、アルフォンソ13世からスペイン王室公認業者として認定されます。
学校を作った会社です
ここが、個人的にいちばん感心した部分です。
1950年代、ロエベはマドリード中心部のフェロカリル通りに最先端のレザークラフト工房をオープンします。そのとき、レザークラフトの学校も創設しました。
公式の言葉を借りれば、体系的なシステムのなかで、知識が教師から生徒へ、世代から世代へと受け継がれています。
技術を個人の腕前で終わらせず、制度にした。 180年続いている理由の一つが、ここにあると思います。
アナグラムは、革に押す「印章」から生まれました
ロエベのマークといえば、4つの「L」を組み合わせたあのアナグラムです。
1970年、デザイナーのビセンテ・ベラが創案しました。そして着想の元は——かつてこのブランドが、高品質のレザーにエンボス加工※を施すために使っていた印章だと公式は説明しています。
※エンボスとは、型を押し当てて素材の表面に凹凸の模様をつける加工のこと。
革に印を押す道具の形が、そのままブランドのマークになった。 革屋らしい成り立ちです。
そして今
1985年にルイ・ヴィトン(後のLVMHグループ)が株主となり、1990年代、創立150周年とともにLVMH傘下に入りました。
2014年にジョナサン・アンダーソンがクリエイティブ・ディレクターに就任。翌2015年に登場した「パズルバッグ」は瞬く間にアイコンになりました。75のレザーパーツからなるキューブ状の構造が特徴です。

2016年にはロエベ財団クラフトプライズを設立。現代のクラフトに対する世界初の国際賞の一つとされ、マドリード、東京、ソウル、ニューヨークで開催されてきました。
日本では、2023年のスタジオジブリとのコラボレーション(『となりのトトロ』『千と千尋の神隠し』に続く3度目、『ハウルの動く城』)を覚えている方も多いはずです。
2025年、ジャック・マッコローとラザロ・ヘルナンデスがクリエイティブ・ディレクターに就任。そして2026年、創立180周年を迎えました。
ブランド基礎データ
| 創立 | 1846年 |
| 創立国 | スペイン(マドリード) |
| 始まり | 職人の集団による小さなレザー工房 |
| 名前の由来 | 工房を買い取ったドイツ商人の姓。ドイツ語で「ライオン」 |
| 代表アイテム | パズル、アマソナ、フラメンコ、ハンモックなどのバッグ |
| 主な素材 | レザー(ナッパ、スエード等)、キャンバス、ラフィア |
| 家庭での洗濯 | ✕ 不可(公式のケアガイドと品質表示に従う) |
| お手入れ難易度 | ★★★☆☆ 日常は乾拭き。ただし色移りと保管に要注意 |
【クリーニング師が解説】まず、公式が言っていること
ロエベは、日本語の公式サイトにケアガイドを公開しています。しかも内容がかなり具体的です。まずそこを見ましょう。
全製品に共通すること
公式ケアガイドの「一般」には、こう書かれています。
- 光や熱に直接さらすことを避ける
- 水や油、香水、化粧品などが付着しないよう注意する
- ラベルに記載されているお手入れの注意事項を必ず守る
- 困ったことがあれば、ロエベストアへ
そしてもう一つ、大事な一文があります。
「色合い、色ムラやシボといったばらつきは、天然素材の特徴としてご理解いただくようお願いいたします。」
革のムラは、不良ではなく特徴である。 ブランド自身がそう言っています。ここは知っておくと、無用な心配をせずに済みます。
バッグと革小物について
こちらがさらに具体的です。公式の指示を整理します。
- 付属の布製のケースに入れて、ゆとりをもって保管する。 購入時の形状を保ち、品質の低下を防げます
- 長期間使わない場合は、時折ケースから出して空気に触れさせる
- 濡れてしまった場合は、柔らかい布で軽くたたいて余分な水分を取り除き、室温で乾燥させる
「軽くたたいて」「室温で」 という書き方に注目してください。こすらない、熱を当てない、ということです。
色移りについて、公式が明言しています
ここは特に重要なので、そのまま引用します。
公式ケアガイドより——
「制作工程の特質上、特に湿度の高い状況では、レザー製品との摩擦が生じることにより、わずかな色移りが起きる場合があります。特にスエードやスエード調のレザーにおいて、明るい色の衣類を着用する際にはご注意ください。」
「これらの製品についても色や染料のわずかな色移りが起こる可能性がありますので、明るい色の衣類を濃い色の製品に合わせて着用することはお控えください。」
つまり——濃い色のロエベと、明るい色の服を合わせない。 湿度が高い日は特に。
これはロエベの品質の問題ではありません。天然皮革と染料に共通する性質で、公式がそれを隠さず書いている、ということです。
そして、移ってしまった色は家庭では落とすことが困難です。予防が唯一の対策です。
クリーニング師からの補足
公式ガイドに書かれていないところを、現場の立場から足しておきます。
持ち手と角から傷みます
現場で見ていると、本体はきれいなのに、持ち手と底の角だけ先に傷んでいるバッグをよく見かけます。
手が触れる場所は皮脂と摩擦を受け続けますし、角は必ずどこかに当たります。手入れの重点は、まずここです。
保湿は「少なすぎるかな」くらいで
革が乾くとひび割れます。月に一度ほど、デリケートクリームをごく少量、布に取って薄く伸ばす。
塗りすぎるとベタついて、かえってホコリを呼びます。 「少なすぎるかな」と感じるくらいがちょうどいいです。
家庭でやってはいけないこと
- 水洗い・洗濯機(輪ジミが残ったり、さまざまな不具合が考えられます)
- 一般的なクリーニング店のドライクリーニング(基本的にはバッグや革製品は衣類のドライの対象外です→一部例外もあります)
- アルコールや除光液で拭く(表面の仕上げが溶けることがあります)
- ビニール袋での保管(湿気がこもります。公式が「布製のケース」と書いているとおりです)
お手入れに役立つアイテム
道具は3つで足ります。
コロニル 馬毛ブラシ(ブナ)
COLLONIL / 約1,980円
革製品用の、天然の馬毛ブラシです。洋服用ではなく、革のために作られた柔らかい毛なので、縫い目やパイピングのホコリを傷つけずに払えます。力を入れず、なでるように使ってください。
コロニル 1909 シュプリームクリームデラックス
COLLONIL 1909 / 約3,300円
コロニルの高級ライン「1909」の保革クリームです。持ち手や縁取りに、ごく少量を薄くのばしてください。ツヤを出したくないときは、塗ったあと強く磨かないのがコツです。使う前に、目立たない場所で試してください。
自分でできない・自信がない方へ
ロエベには公式のケアサービスがあります
公式ケアガイドに、はっきり書かれています。
「ロエベでは、バッグや財布、小物製品のメンテナンスおよびハンド・ケアサービスを提供しております。」
また「一般」の項にも、困ったことがあればロエベストアへ、スタッフが製品のアフターサービスについて案内する、とあります。
次のような状態なら、自分で手を出さずに相談してください。
- 革の色が広い範囲で剥げている、擦り切れている
- 持ち手が切れかかっている、金具が外れた
- カビが生えた
- 色が移ってしまった
なお、衣類を扱う一般的なクリーニング店では、バッグの修理は対応範囲外のことがほとんどです。「クリーニングに出す」ではなく「修理に出す」と考えて、革製品を扱う業者を探してください。しかし、一部クリーニング店でも扱いのあるところもあります。お近くのクリーニング店に一度聞いてみてもいいかもしれません。
新品のロエベを買うなら
ロエベを新品で買うなら、正規に扱っているお店を選んでください。フリマや、極端に安いサイトには偽物もあります。「ロエベ アウトレット」を名乗る偽サイトも報告されているので、注意してください。
ここでは、百貨店の三越伊勢丹が運営する通販(ISETAN MITSUKOSHI LUXURY)で買える新品を紹介します。
ロエベ ハンモックバッグ コンパクト(ソフトグレインカーフ)
LOEWE / 404,800円(税込・2026年9月時点)
形を変えて持てる、ロエベの定番バッグです。柔らかいカーフ(子牛の革)なので、持ち手の保湿をこまめに。
ロエベ スカーフ バッグ ミニ(スムースカーフ)
LOEWE / 342,100円(税込・2026年9月時点)
なめらかなカーフのミニバッグです。表面が平らな革は傷が目立ちやすいので、ブラシは力を入れずに。
ロエベ クロー コインカードホルダー(グロッシーラム)
LOEWE / 68,200円(税込・2026年9月時点)
ツヤのあるラム(子羊の革)の革小物です。デリケートな革なので、クリームはごく少量にしてください。
まとめ
- ロエベは1846年マドリード創立。一人の創業者ではなく、職人の集団から始まりました。公式いわく「世界で2番目に歴史あるラグジュアリーファッションブランド」。2026年で180年
- 名前は、工房を買い取ったドイツ商人エンリケ・ロエベ・ロスバーグの姓。ドイツ語で「ライオン」
- 1905年、アルフォンソ13世からスペイン王室公認業者に認定
- 1950年代にレザークラフトの学校を創設。 技術を個人の腕前で終わらせず、制度にしました
- アナグラム(4つのL)は1970年、ビセンテ・ベラの作。 着想元は、革にエンボスを押すための印章でした
- 2015年のパズルバッグは75のレザーパーツからなるキューブ状の構造
- 公式ケアガイドは「光と熱を避ける」「水・油・香水・化粧品を付けない」「布製ケースにゆとりをもって保管」「濡れたら軽くたたいて室温で乾燥」
- 色移りについて公式が明言しています。 湿度の高い日、濃い色の製品と明るい色の衣類を合わせない。特にスエード
- 革のムラやシボは「天然素材の特徴」だと公式が書いています。不良ではありません
- 公式にメンテナンスとハンド・ケアサービスがあります
180年前、マドリードの小さな工房で財布や写真立てを作っていた職人たちがいました。手元の一つは、その延長線上にあります。 公式が書いている指示は短く、そして具体的です。まずそこから始めてみてください。
この記事を書いた人

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


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