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ロエベといえばバッグ。そう思われがちですが、この会社は60年以上、服を作り続けています。
そして、ロエベの服には他のブランドとはっきり違うところがあります。服の発想が、ファッションではなく「工芸」から来ているのです。
もう一つ、実用的な話を先に書きます。ロエベは公式のケアガイドで、服を3つに分けています。 ウーブンウェア、ニットウェア、レザーウェア。そしてそれぞれに違う指示を出しています。
この記事では、ロエベの服の成り立ちを見たうえで、その3分類をそのまま扱いの地図として使う方法を書きます。
ロエベは、いつから服を作っているのか
ロエベは1846年、マドリードの小さなレザー工房として始まりました。財布や写真立てを作る、革小物の店です。
服が加わったのは、それからずいぶん後のことでした。
- 1960年 … 初のウィメンズ レディトゥウェアを発表
- 1983年 … メンズ レディトゥウェアを発表
60年以上の歴史があります。 「バッグのブランドが服も出している」のではなく、革の会社が服の領域へ広がっていった、という順番です。
この順番は、あとで出てくる「レザーウェア」という分類が、ロエベにとって特別な意味を持つ理由でもあります。
▶ ブランドの成り立ちそのものは、こちらの記事にまとめています → ロエベってどんなブランド?レザーのお手入れを公式ガイドから読み解く
ロエベの服を理解する鍵は「工芸」です
ここが、このブランドの服のいちばん面白いところです。
工芸に、賞を出している会社です
2016年、ロエベはロエベ財団クラフトプライズを設立しました。公式によれば、現代のクラフトに対する世界初の国際賞の一つとされています。
審査するのは、デザイン、建築、ジャーナリズム、批評、美術館のキュレーターといった分野の第一人者たち。開催地はマドリードに始まり、東京、ソウル、ニューヨークと続いてきました。
服を売る会社が、工芸の賞を主催している。 この位置関係が、そのままロエベの服に出ています。
過去の工芸家へのオマージュが、そのまま服になります
ロエベは、シーズンごとにカプセルコレクションを発表してきました。その題材が独特です。
- 2017年|ウィリアム・モリス
- 2018年|チャールズ・レニー・マッキントッシュ
- 2019年|ウィリアム・ド・モーガン
いずれもアーツ&クラフツ運動の中心人物です。公式は、これらを「歴史的なアーティストの作品、美学、功績を復活させ、現代的なコレクションを通じて彼らの不朽の創造的ビジョンを再解釈する」試みだと説明しています。
さらにその後は、陶芸家に着想を得たコレクションが続きます。
- 桑田卓郎(日本の陶芸家)
https://www.vogue.co.jp/fashion/article/2020-03-01-loewe - ケン・プライス(アメリカのアーティスト)
- バーナード・リーチ(イギリスの陶芸家)
服のブランドが、陶芸から服を作る。 ここまで一貫して工芸を見ているブランドは、そう多くありません。
余った革から、バッグを編みます
2021年に始まったサープラス プロジェクトも、この延長線上にあります。
過去のコレクションで余った高品質なレザーを使って、ウーブン(編んだ)バスケットバッグを作るというものです。公式はこれを「循環性を高め、廃棄物を最小限に抑えながら、貴重な資源から美しいものを作る機会」と表現しています。
余り物を工夫で価値に変える。 グッチのディアマンテやバンブーにも似た発想ですが、ロエベの場合はそれを現代の環境配慮として意識的にやっているところが違います。
公式は、服を3つに分けています
さて、ここからが実用の話です。
ロエベの公式ケアガイドは、衣類を3つのカテゴリーに分けて、それぞれ別の指示を出しています。
| 分類 | 主な素材 | 公式が特に言っていること |
|---|---|---|
| ウーブンウェア | リネン、コットンなどの天然繊維 | 風通しのよい場所で保管 |
| ニットウェア | ニット類全般 | 平らな面で折りたたんで保管 |
| レザーウェア | 革の衣類 | コットンカバーに収め、湿気のない涼しい場所へ |
まず、手元の一着がどれなのかを決める。 それだけで、やるべきことがかなり絞れます。
【クリーニング師が解説】3つの分類ごとの扱い方
共通していること
3つとも、公式が同じことを書いています。
- 水や油、香水、化粧品が付着しないよう注意する
- 光や熱に直接さらすことを避ける
香水と化粧品が名指しで挙がっているのは、見落としやすいところです。どちらも、付いた直後は分からず、時間が経ってから変色として出てきます。
服を着てから香水をつける習慣がある方は、服にかからない距離を意識してみてください。
ウーブンウェア(リネン・コットンなど)
公式ケアガイドより——
ロエベの本商品は、高品質な素材で制作されています。リネンやコットンなど、天然繊維が採用された衣類は必ず風通しのよい場所で保管し、水や油、香水、化粧品が付着しないようご注意ください。
指示が「保管」に寄っているのが特徴です。
天然繊維は湿気を吸います。吸ったまま閉じ込めるとカビと黄ばみの原因になる。だから風通し、というのが理屈です。クリーニングから戻ったビニール袋は、必ず外してください。
ニットウェア
こちらは、かなり具体的です。
ロエベのニット類は、平らな面で折りたたんで保管してください。品質の低下を避け、ご購入時の形状を保つことができます。損傷や糸のほつれにつながるようなネックレスや、その他のジュエリーのご使用はお控えください。 毛玉は天然素材ならではの特徴です。摩擦を避けることで毛玉防止につながります。
3つとも、押さえておく価値があります。
① 畳む。吊るさない。 ニットは編み地そのものが形を作っているので、吊るすと自重で肩と身頃が伸びます。
② ジュエリーに注意。 これは、あまり見かけない注意書きです。ネックレスの金具や石が編み目に引っかかると、糸が引き出されて戻せません。 繊細な編みほど起きやすい事故です。
③ 毛玉は「天然素材ならではの特徴」。 ここは公式の言葉です。不良ではない。 そして防ぐ方法も書かれていて、摩擦を避けることだとされています。
毛玉が出る場所は決まっています。脇の下、袖の内側、カバンが当たる肩。予防としては、同じバッグを同じ肩にかけ続けないだけでも違います。
レザーウェア
革のジャケットやコートです。
光や熱に直接、長時間さらすことを避けてください。製品は付属の衣類用のコットンカバーに収め、湿気のない涼しい場所で保管してください。水や油、香水、化粧品が付着しないようご注意ください。濡れた場合は、柔らかい布で軽くたたいて余分な水分を取り除き、室温で乾燥させます。
バッグのときとまったく同じ指示が出ています。「軽くたたいて」「室温で」。
革の衣類で、絶対にやってはいけないこと
- 洗濯機で洗う(縮み、硬化、輪ジミ。戻せません)
- ドライヤーやヒーターで乾かす(公式が「室温で」と書いているのは、そういう意味です)
- こすって水気を取る(公式は「軽くたたいて」です)
- ビニールのカバーで保管する(公式は「コットンカバー」。通気性が必要だということです)
そして革の衣類は、一般的なクリーニング店の守備範囲外であることがおおいので、革を扱う専門の業者を探してください。しかし、革の専門業者と提携していたり、革のことをよく知って、お手入れできるクリーニング店もあります。いちど、お近くの信頼できるクリーニング店に聞いてみてもいいですね。
クリーニング師からの補足
公式ガイドに書かれていないところを、現場の立場から足しておきます。
「カバー」を捨てないでください
公式は、レザーウェアについて「付属の衣類用のコットンカバー」と書いています。バッグの項でも「付属の布製のケース」と書かれています。
あれは包装ではなく、保管の道具です。 買ったときに付いてくるものなので、つい捨ててしまいがちですが、捨ててしまった場合は、綿や不織布のカバーで代用してください。
ビニールでは意味がありません。通気性があることが条件です。
ニットを洗うなら
水洗いできる表示があるものに限った話です。
- 冷たい水に、おしゃれ着用の中性洗剤を溶かす
- 押し洗い。 上から静かに押して、離す。もまない、こすらない
- 絞らない。 タオルにはさんで押さえて水気を取る
- 平らに置いて乾かす。 濡れているうちに寸法を整えるのが決定打です
公式が「平らな面で折りたたんで保管」と言っているのと、同じ理屈です。ニットは平らにしておくのが基本、と覚えておくと迷いません。
毛玉の取り方
公式が「天然素材ならではの特徴」と言っているとおり、出ること自体は避けられません。取り方だけ書いておきます。
- 早めに取る。 大きく育つと、取ったあとが薄くなります
- 平らに置いて、軽く当てる。 生地を持ち上げて引っ張ると、余計な繊維まで刈ってしまいます
お手入れに役立つアイテム
LIVRER(リブレ)シルク&ウール ディタージェント
リネン・コットンのウーブンウェアにも、ニットにも使える中性洗剤です。一般的な洗濯洗剤にはウールの繊維を傷めるものがあるので、中性で、ウール対応と書かれたものを選んでください。ニットを洗うなら、洗剤だけは替える価値があります。
自分でできない・自信がない方へ
ロエベの公式ケアガイドには、困ったことがあればロエベストアへ、スタッフが製品のアフターサービスについて案内する、と書かれています。
次のような状態なら、自分で手を出さずに相談してください。
- ニットの糸が引き出された、穴が開いた
- 革の衣類の色が剥げた、硬くなった
- 香水や化粧品のシミが、時間をおいて浮いてきた
- カビが生えた
なお、ニットの穴は「かけつぎ」という技法で目立たなくできます。 編み地を糸単位で埋めていく仕事で、専門にしている業者があります。捨てる前に一度相談してみてください。
まとめ
- ロエベは1960年にウィメンズ、1983年にメンズのレディトゥウェアを発表。革の会社が服へ広がっていったという順番です
- 服の発想は工芸から来ています。 2016年にロエベ財団クラフトプライズを設立し、ウィリアム・モリス、マッキントッシュ、ド・モーガンといったアーツ&クラフツの人物や、桑田卓郎、ケン・プライス、バーナード・リーチら陶芸家に着想を得たコレクションを出してきました
- 2021年のサープラス プロジェクトは、余ったレザーを編んでバッグにする試みです
- 公式ケアガイドは、服を「ウーブン/ニット/レザー」の3つに分けています。 まず自分の一着がどれかを決めるのが出発点
- 3つに共通するのは「水・油・香水・化粧品を付けない」「光と熱を避ける」
- ウーブンは風通しのよい場所へ。ニットは平らに畳んで。レザーはコットンカバーに入れて涼しい場所へ
- ニットにはジュエリーを引っかけないという注意が公式にあります。糸が引き出されると戻せません
- 毛玉は「天然素材ならではの特徴」だと公式が明言。防ぐ方法は摩擦を避けること
- 濡れた革は「軽くたたいて、室温で乾燥」。こすらない、熱を当てない
工芸から服を作っているブランドの手入れが、「畳む」「風を通す」「こすらない」という地味な話に着地するのは、考えてみれば当然かもしれません。手でつくられたものは、手で扱う。 公式の指示は、ほとんどそれだけです。
この記事を書いた人

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。
業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。
店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。


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