グッチ(GUCCI)ってどんなブランド?GGキャンバスと革のお手入れ方法も解説

バッグ・革小物

本記事にはプロモーション(アフィリエイト広告)を含みます。

赤と緑のストライプ、向かい合った2つのG、馬具をかたどった金具。グッチは、名前を知らなくても「あの柄」で分かってしまうブランドかもしれません。

ただ、いざ手元に一つあると、扱いに迷います。あのベージュの生地は、汚れたら拭いていいのか。持ち手の革が乾いてきたけれど、クリームを塗っていいのか。そもそも、洗えるものなのか。

この記事では、グッチがどんな成り立ちのブランドなのかを見たうえで、GGキャンバスという素材の正体と、革の部分をどう扱えばいいのかを、クリーニング師の目線で整理します。

グッチとはどんなブランド?

グッチ(GUCCI)は、1921年にイタリア・フィレンツェで生まれたブランドです。創業者はグッチオ・グッチ。最初の店は、フィレンツェのヴィーニャ・ヌォーヴァ通りにありました。

面白いのは、出発点がファッションではなく「旅行かばん」だったことです。

若いころのグッチオは、ロンドンのサヴォイ・ホテルで働いていました。ポーターとして、宿泊客の荷物を運ぶ仕事です。当時サヴォイに集まっていたのは、ヨーロッパ中の裕福な旅行者たち。彼らが持ち込むトランクや旅行かばんを、来る日も来る日も手にしていたわけです。

そこで見た「良い鞄とはどういうものか」を持ち帰って、故郷のフィレンツェで自分の工房を開いた。それがグッチの始まりでした。フィレンツェは古くから革の街です。技術を持った職人が身近にいたことも大きかったはずです。

材料がないところから、模様が生まれた

グッチを語るうえで外せないのが、1930年代の「革が手に入らなくなった」時期です。

当時イタリアは国際的な経済制裁を受けていて、革のような輸入資材が不足しました。そこでグッチが代わりに使ったのが、麻を織ったキャンバス地です。ただの代用品で終わらせず、そこにひし形を並べた模様を入れた。これがディアマンテと呼ばれる、グッチ最初期の象徴的な生地になりました。

ひし形が連続する柄のしくみ斜めの線が交差してひし形がひとつでき、それを並べると面全体が格子状の柄になるという説明図。① 斜めの線が交わるこれで「ひし形」がひとつ② 並べると面になるひし形の連続=記事中の「ディアマンテ」の考え方
ひし形(イタリア語でディアマンテ)を並べるという発想。斜めの線が交わってひし形ができ、それを繰り返すと面全体の柄になります。

同じことが戦後にも起きます。1947年、やはり材料が足りないなかで職人たちが目をつけたのが、日本から来た竹でした。熱で曲げて持ち手にしたのがバンブーバッグです。

竹を熱で曲げて持ち手にする工程まっすぐで節のある竹を火であぶり、曲げてU字の持ち手にする三段階の図。① まっすぐな竹横線が「節(ふし)」② 火であぶる熱を加えるとしなる③ 曲げて持ち手にする節の位置が、そのまま表情になる1947年、革が足りないなかで日本から来た竹に目をつけた工夫
竹は熱を加えるとしなります。まっすぐな竹をあぶって曲げ、持ち手にした。節の位置がそのまま表情になります。

足りないものを工夫で埋めた結果が、そのままブランドの顔になった。 グッチの代表的な意匠は、だいたいこの流れから生まれています。1953年にはホースビットのローファーが登場しました。ホースビットとは、馬具の轡(くつわ)——馬の口にくわえさせて手綱とつなぐ金具——をかたどったものです。乗馬の道具という「実用の形」を、そのまま靴に持ち込んだわけです。

馬具の轡(くつわ)の図解左右の輪と、中央で連結した口に入る棒(銜)からなる馬具の轡の図。輪に手綱をつなぎ、棒を馬の口にくわえさせる。轡(くつわ)馬の口にくわえさせ、左右の輪に手綱をつなぐ金具輪|手綱(たづな)をつなぐ輪|頬革(ほおがわ)をつなぐ銜(はみ)|口に入る棒。中央で折れて口になじむ
馬具の轡(くつわ)。馬の口に棒をくわえさせ、左右の輪に手綱をつなぎます。この形を金具にしたのがホースビットです。

そして今

1960年代にはGGのロゴが登場し、ジャッキー・ケネディが愛用したバッグが「ジャッキー」の名で呼ばれるようになります。このバッグは、丸みのあるホーボーシェイプ(肩に掛けたときに袋のようにたわむ形)に、ピストン型の留め具——金具を横にスライドさせて開け閉めするタイプ——を組み合わせたものです。1961年から続く定番で、いまは「ジャッキー 1961」の名で作られています。1970〜80年代には一族の内紛とライセンスの乱発で勢いを失いましたが、1990年代にトム・フォードを迎えて立て直しました。

現在はフランスのケリング(Kering)傘下です。1999年に当時のPPRが出資し、2004年に完全子会社となりました。2025年からはデムナがアーティスティック・ディレクターを務めています。

創業から100年を超えて、いまも変わり続けているブランドです。

ブランド基礎データ

創業1921年
創業国イタリア(フィレンツェ)
創業者グッチオ・グッチ
出発点旅行かばん。ロンドンのホテルで見た「良い鞄」から
代表アイテムGGキャンバスのバッグ、バンブーバッグ、ホースビットローファー
主な素材レザー(カーフ・スエード)、GGキャンバス(コーティング生地)、竹、金具
家庭での洗濯✕ 不可
お手入れ難易度★★★☆☆ 日常は乾拭きだけ。ただし保管を間違えると戻せない

「GGキャンバス」って、そもそも何?

グッチのバッグでいちばんよく見るのが、あのベージュ×焦げ茶の生地です。ここを分かっておくと、扱い方が一気にはっきりします。

GGキャンバスは、布そのものではありません。 織った生地の表面に、樹脂のコーティングをかけたものです。

現在の主流であるGGスプリームは、キャンバスにポリウレタンのコーティングを施しています。以前は「GGプラス」と呼ばれ塩化ビニル系のコーティングでしたが、環境への負荷を考えてポリウレタンに切り替えられました。

コーティングされていることで、性質がこう変わります。

  • 水がしみ込みにくい。 少し濡れても、すぐ拭けば布地まで届きません
  • 表面を拭ける。 布のままなら擦れば毛羽立ちますが、コーティング面は乾いた布で拭けます
  • その代わり、溶剤に弱い。 アルコールや除光液が付くと、コーティングが白く曇ったり溶けたりします

「加水分解」について

ポリウレタンには、覚えておいたほうがいい性質があります。空気中の水分と少しずつ反応して分解していく、というものです。これを加水分解と呼びます。

誤解しないでいただきたいのですが、これはグッチの品質の話ではありません。 ポリウレタンを使った製品すべてに共通する、素材そのものの性質です。スニーカーの靴底がボロボロになる現象も、合皮のソファがはがれてくるのも、同じ理屈です。

進行を早めるのは高温と多湿です。だから、この素材にとって最大の敵は「使うこと」ではなく「しまい方」になります。ここは後ほど詳しく書きます。

弱いのは、実は革の部分

もうひとつ。GGキャンバスのバッグは、縁取り・持ち手・底の角が革でできていることがほとんどです。

現場で見ていると、本体のキャンバスはきれいなのに、革の部分だけ先に傷んでいるというバッグをよく見かけます。手が触れる持ち手は皮脂と摩擦を受け続けますし、革は乾けばひび割れます。

つまり、GGキャンバスのバッグの手入れは、「キャンバスを拭く」よりも「革を守る」が中心になります。

【クリーニング師が解説】お手入れの注意点

やってはいけないこと

① 水洗い・洗濯機は不可です。
革が縮み、硬くなり、水ジミが輪になって残ります。一度出た水ジミは、元に戻せないことが多いです。

② 一般的なクリーニング店の「ドライクリーニング」には出せません。
バッグや革製品は、衣類のドライクリーニングの対象外です。溶剤はコーティングや接着剤にも影響します。革製品は、専門のリペア業者の領域だと考えてください。ただし、最近は、クリーニング店でも受付してくれるところもありますので、お手入れしてくれるところは、たくさんあります。

③ アルコール・除光液・シンナーで拭かない。
コーティングが溶けたり、白く曇ったりします。除菌シートも、アルコールを含むものは避けてください。

④ 濡れたまま放置しない。直射日光に当てない。
濡れたら、その場で乾いた布で押さえるように水気を取り、風通しのいい日陰で乾かします。ドライヤーの熱風は革を硬くするので使いません。

⑤ ビニール袋に入れてしまわない。
これが一番多い失敗です。湿気が閉じ込められて、カビと加水分解の両方を早めます。

保管の仕方が、いちばん効きます

ポリウレタンにとっても革にとっても、敵は高温多湿です。裏を返せば、しまい方を変えるだけで寿命が変わります。

  • 不織布の袋に入れる。 買ったときに付いてくる保存袋がこれです。捨てないでください。なければ、枕カバーのような綿の布でも構いません
  • 中に詰め物をする。 型崩れを防ぎます。丸めた新聞紙でもいいのですが、インクが移ることがあるので、間に白い紙か布を一枚挟むと安心です
  • クローゼットの下のほうを避ける。 湿気は低いところにたまります。棚の上段のほうが向いています
  • 除湿剤を置く。 ただしバッグに直接触れさせないでください
  • 年に何度か、袋から出して風を通す。 これだけでカビの発生がかなり違います

日常のお手入れ

キャンバス面 … 乾いた柔らかい布で、なでるように拭くだけで十分です。汚れが気になるときも、いきなり洗剤を使わず、まずは水を含み、固く絞った布で試してください。

革の部分 … 月に一度ほど、革用のデリケートクリームをごく少量、布に取って薄く伸ばします。塗りすぎるとベタついて逆にホコリを呼ぶので、「少なすぎるかな」くらいがちょうどいいです。

縫い目とパイピング … ホコリがたまるところです。柔らかい馬毛のブラシで軽く払います。

色移りに気をつける … 濃い色のデニムに触れ続けると、淡い色の部分に色が移ることがあります。移ってしまった色は、家庭では抜けないと思ってください。予防が唯一の対策です。

お手入れに役立つアイテム

道具は4つで足ります。買い足すより、この4つを長く使うほうが結果が良いです。

ケア用品は、わたしが仕事で実際に使っているコロニル(COLLONIL/ドイツのレザーケアブランド)で揃えました。革の道具屋が作っているものなので、迷ったらここから選んで間違いありません。

コロニル 馬毛ブラシ

COLLONIL / 約1,980円

縫い目やパイピングのホコリ落とし用です。豚毛は硬いので、革とコーティング面に使うなら馬毛。力を入れず、払うように動かします。スムースレザーから合成皮革、布まで対応するので、これ1本で足ります。

コロニル 1909 シュプリームクリームデラックス

COLLONIL / 100ml・約3,300円

持ち手と縁取りの革だけに使う保革クリームです。シーダーウッドオイルとラノリンが主体で、有機溶剤は使われていません。GGキャンバスの面には塗らず、革の部分にごく少量を。

⚠ 公式はマットな質感の革と、新しいヌメ革には推奨していません。グッチの縁取りは自然な色の革であることが多いので、必ず目立たない場所で試してから使ってください。

コロニル ウォーターストップ

COLLONIL / 200ml・約2,640円(400ml版もあり)

フッ素を使わない防水スプレーです。スムースレザー、スエード、エナメル皮革、布地まで対応するので、バッグにも衣類にも使えます。20cmほど離して2回、約10分で乾きます。効果は2週間ほどなので、雨の季節は掛け直しを。

不織布の保管袋

コロニルにはない品なので一般品です

しまうときはビニール袋ではなく不織布。湿気を閉じ込めないことが、記事で書いた加水分解とカビの両方を遅らせます。巾着型で、バッグが余裕を持って入るサイズを。色は白か生成りが安全です。

純正のダストバッグが残っているなら、それが一番です。捨てずに使ってください。

自分でできない・自信がない方へ

専門業者に頼む選択肢

グッチのバッグは、自分で無理をしないほうがいい場面がはっきりしています。 次のような状態なら、手を出さずに相談してください。

  • 革の色が広い範囲で剥げている、または擦り切れている
  • 内側の生地がベタつく、粉を吹いている(加水分解が進んだ状態)
  • 持ち手が切れかかっている、金具が外れた
  • カビが生えた

順番としては、まずブランド公式のリペアサービスに問い合わせるのが確実です。純正の部材を使った修理ができますし、そのバッグの構造をいちばん分かっているのは作った側です。店舗に持ち込むか、公式サイトの窓口から相談できます。

公式で対応できない年式のものや、費用が見合わない場合には、バッグ・革製品の修理を専門にしている民間の業者という選択肢があります。染め直しやパーツ交換まで対応するところもあります。

ひとつ注意点があります。衣類を扱う一般的なクリーニング店では、バッグは対応範囲外のことがほとんどです。 「クリーニングに出す」という感覚ではなく、「修理に出す」と考えて、まずは革製品を扱う業者を探してください。中には、クリーニング店でも受付してくれるところもありますので、いつも出しているクリーニング店に聞いてみるのもいいですね。

まとめ

  • グッチは1921年フィレンツェ創業。出発点は旅行かばんで、ロンドンのホテルで働いた創業者が「良い鞄」を持ち帰ったところから始まった
  • ディアマンテもバンブーも、材料が足りない時期の工夫から生まれた。足りないものを埋めた結果が、そのままブランドの顔になっている
  • GGキャンバスは布ではなく、コーティングされた生地。 水には比較的強いが、アルコールなどの溶剤には弱い
  • ポリウレタンは加水分解する。これは素材そのものの性質で、グッチに限った話ではない。進むのは高温多湿の場所なので、敵は使うことではなく、しまい方
  • 実際に先に傷むのは革の部分。持ち手と縁取りを月1回のクリームで守るのが、いちばん効く手入れ
  • 剥げ・ベタつき・カビは自分で直そうとしない。公式のリペア → 革製品専門の修理業者の順で相談する

材料が手に入らないところから模様を生み出したブランドですから、道具としてよくできています。しまい方さえ間違えなければ、驚くほど長く使えます。


この記事を書いた人

ソワのアイコン。本を開いて鉛筆を持つフレンチブルドッグのイラスト

ソワ|国家資格を持つ現役のクリーニング師です。クリーニング歴は30年以上になります。

業界に長くいても、知らないブランドはまだまだあります。ブランドを一つずつ勉強しながら、その成り立ちと、そこから導かれるお手入れの方法を書いています。服が「何のために作られたのか」が分かると、扱い方の答えは、たいていそこにあります。

店の名前は出していません。特定のお店に来ていただくためのブログではないからです。ご自身で手入れをされるにせよ、お近くの信頼できるお店に相談されるにせよ、その判断の材料になれば十分だと思っています。

運営者プロフィール|ソワのブランド勉強帖について

コメント

タイトルとURLをコピーしました